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彼との子供だったら、欲しいな……

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「こちらについては、何も心配要りません。私も頑張らせていただいています。あなたが自分の力を存分に発揮できるように。カリン」

昼食の後でお茶にしながら、ベントは私を包み込むような表情でそう言ってくれた。

「…まったく……ホントにそういうところなんだよ。癪に障るのは……!」

と思わず悪態を返してしまったけど、たぶん、顔はニヤケてしまってただろうな。

別に心配はしてなかったけど、自分でちゃんとできる人だって分かってたけど、やっぱりたまにはこうして顔を合わせるのは必要なんだなって感じてしまった。

「今度からは、五回目の休みの前日から泊りがけで帰ってくるようにするよ」

彼との時間も作りたくなって、私はそう言ってしまってた。正直、彼に触れたくて仕方なかった。アルカセリスがいなかったら、たぶん、ここでそのまま彼に抱きついて求めてしまってたと思う。

私はしっかりと、そういう意味でも彼のことが好きなんだ。

『彼との子供だったら、欲しいな……』

と思ってしまうくらいには。

そうだ。その意味でも私の代わりに現場を監督できる人を確保しなきゃ。子供ができたら今みたいには仕事もできなくなると思うし。



なんてことを思いながらサイサアルメド州の方の家に戻った私だけど、そこに届いた手紙を見て、思わず息を呑むことになった。

リレからの手紙だった。そこには、慌てたように崩れた文字で、

『カリン様、ごめんなさい。アリエ商会、守り切れませんでした。トゥルカ商会という会社に乗っ取られてしまいました』

って書かれてた。

「乗っ取り…!? どういうこと……!?」

手紙だけでは事情が掴めず、私は、国の方でなんか情報を掴んでいないかと、翌日、ファルトバウゼン王国の大使のところへと話を聞く為に馬車を走らせた。

「これはこれはスクスミ卿、息災そうで何より」

ファルトバウゼン王国にいた時にも何度か顔を合わせたことがある、農業・商業派の貴族の一人だった人物が、大使としてガルフフラブラ王国に駐在していた。

私は挨拶もそこそこに、パッと見は温和そうな好々爺という印象のその人に向かって、

「ムッフクボルド共和国内のアリエ商会について何か情報は入ってませんか?」

と単刀直入に尋ねた。

すると大使は、私が顔を出した用件についてすでに察してたみたいで、

「やはりそのことでしたか…」

と言った後、

「実は、間諜からの報告によると、最近、勢力を伸ばしてきたトゥルカ商会という会社が、次々とカリン商会とつながりのある会社を乗っ取っているとのことなのです」

って。

「……何が起こっているんです……? アリエ商会の従業員達は無事なんでしょうか……?」

背筋に冷たいものを感じつつ口にした私の問い掛けには、

「はっきりしたことはまだこちらでも掴めていませんが、必ずしも何か乱暴な手段で乗っ取ったというわけではないようです。しかも、社員の殆どはそのまま雇っているんだとか」

と返してきたのだった。

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