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正しい手順で正しく作業を行えば決まった結果が返ってくる
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サイサスリスト氏の秘書の女性には魔法の素養があることは、初めて見た時から分かってた。その素養がある人特有の力の流れを感じたからだ。
と言っても、私と同等程度に使えるようになるかって言われるとそれは『否』だけどさ。
でも、<堆肥化の魔法>くらいなら苦も無く使えると思う。しかも、秘書なんて仕事もしてるくらいだから知性も高い。呪文を正確に覚えて詠唱するのも難しくないハズだ。
すると案の定、彼女は数回、私が呪文を教えただけで正確にそれを理解し、水に濡れた落ち葉を易々と堆肥に変えてしまったのだった。
「おお…!」
その結果に、サイサスリスト氏も思わず声を上げる。
そこですかさず、私は彼に合うように説明した。
「魔法使いの言う精霊とは、目に見えないくらい小さな生き物のことなんです。それらの中にはこの落ち葉や排泄物を分解し土へと還す者達もいます。<堆肥化の魔法>は、それを促進する魔法なんです。
これは決して、まやかしやまじないの類じゃありません。畑を耕して作物を植えて育てるのと同じ、きちんと意味のある<作業>なんです。正しい手順で正しく作業を行えば決まった結果が返ってくる。それだけの話です」
リアリストなサイサスリスト氏には、こういう言い方の方が届く。
「むう……奇術の類ではないのだな?」
念を押すように訊いてきたけど、興味を持ってきてるのは分かる。
これまで、彼の前で魔法を使った魔法使い達は、たぶん、こういう言い方ができなかったんだろうな。だけどそれは魔法使い達が無能というわけじゃない。単に知識がなかっただけだ。知識がないから魔法が何故そういう結果をもたらすかということを論理的に説明できないだけなんだ。
だから彼の不信感を払拭することができなかった。
けれど、それでも彼は、
「今すぐには返事はできん。だが、今日中には結論を出し、明日改めて返答しよう」
と答えを濁した。これまで魔法を疑ってきたことをそうそう覆すこともできないんだろうな。
でもそれも当然だと思う。
で、私が帰った後、本当にただのトリックではないことを確認するために、サイサスリスト氏は、役所の庭に落ちていた枯葉を集めて水に濡らし、秘書の女性に改めて<堆肥化の魔法>を試させたそうだ。
するとやっぱり同じように堆肥化されて、確信してくれたらしい。
翌日、
「いいでしょう。あなたの提案を受け入れましょう。ただし、いきなりすべてというわけにはいかない。処分場の一部で試した結果を見て、正式に採用するかどうかを決める。それでよろしいですかな?」
と、彼はやっぱり慎重な返答をしてきた。
だけど、
「はい、それで結構です」
と私は返す。
むしろ彼がそうやって慎重に対応してくれることに安心した。あの程度で掌を返して私を全面的に信用するような人じゃかえって不安だったからね。
と言っても、私と同等程度に使えるようになるかって言われるとそれは『否』だけどさ。
でも、<堆肥化の魔法>くらいなら苦も無く使えると思う。しかも、秘書なんて仕事もしてるくらいだから知性も高い。呪文を正確に覚えて詠唱するのも難しくないハズだ。
すると案の定、彼女は数回、私が呪文を教えただけで正確にそれを理解し、水に濡れた落ち葉を易々と堆肥に変えてしまったのだった。
「おお…!」
その結果に、サイサスリスト氏も思わず声を上げる。
そこですかさず、私は彼に合うように説明した。
「魔法使いの言う精霊とは、目に見えないくらい小さな生き物のことなんです。それらの中にはこの落ち葉や排泄物を分解し土へと還す者達もいます。<堆肥化の魔法>は、それを促進する魔法なんです。
これは決して、まやかしやまじないの類じゃありません。畑を耕して作物を植えて育てるのと同じ、きちんと意味のある<作業>なんです。正しい手順で正しく作業を行えば決まった結果が返ってくる。それだけの話です」
リアリストなサイサスリスト氏には、こういう言い方の方が届く。
「むう……奇術の類ではないのだな?」
念を押すように訊いてきたけど、興味を持ってきてるのは分かる。
これまで、彼の前で魔法を使った魔法使い達は、たぶん、こういう言い方ができなかったんだろうな。だけどそれは魔法使い達が無能というわけじゃない。単に知識がなかっただけだ。知識がないから魔法が何故そういう結果をもたらすかということを論理的に説明できないだけなんだ。
だから彼の不信感を払拭することができなかった。
けれど、それでも彼は、
「今すぐには返事はできん。だが、今日中には結論を出し、明日改めて返答しよう」
と答えを濁した。これまで魔法を疑ってきたことをそうそう覆すこともできないんだろうな。
でもそれも当然だと思う。
で、私が帰った後、本当にただのトリックではないことを確認するために、サイサスリスト氏は、役所の庭に落ちていた枯葉を集めて水に濡らし、秘書の女性に改めて<堆肥化の魔法>を試させたそうだ。
するとやっぱり同じように堆肥化されて、確信してくれたらしい。
翌日、
「いいでしょう。あなたの提案を受け入れましょう。ただし、いきなりすべてというわけにはいかない。処分場の一部で試した結果を見て、正式に採用するかどうかを決める。それでよろしいですかな?」
と、彼はやっぱり慎重な返答をしてきた。
だけど、
「はい、それで結構です」
と私は返す。
むしろ彼がそうやって慎重に対応してくれることに安心した。あの程度で掌を返して私を全面的に信用するような人じゃかえって不安だったからね。
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