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私は、<魔法>というものを信じてはいないんです

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<植え替え>っていうのは、それを行っても割と大丈夫な種類の作物で行わないと上手くいかないことの方が多いんだよね。

今回も、当然、定着しないものが多かった。だけど、なんとか持ちこたえてくれたものについては、力強く育ってくれた。従来の畑に植えられたものを超えて。

「これは……! すごいですね……!」

呆気にとられる感じでそう言ってくれるのを聞きながら、

「今年はあくまで、来年に向けての準備の年と考えてください。よろしくお願いします」

と頭を下げた。

「そんな! 滅相もない! カリン様のおかげで皆の病が良くなったんです。それを思えば一年待つことくらいなんともありません!」

って言ってもらえたのは本当に幸いだった。これも、まず病気に対処したからなんだろうな。

しかし、取り敢えずは治まったと言っても、井戸水が汚染されたままにはしておけない。今はまだ食中毒で済んでても、もっと重篤な病気が蔓延することになる可能性だってある。

だから私は、サイサスリスト氏のところを訪れていた。

「トヒ村(食中毒が蔓延していた村)での流行り病の件ですが、今の排泄物の処分場でのやり方に精霊が反目していることが原因です。早急に手を打たないと今後もっと大変なことになるでしょう」

と告げさせてもらう。

だけどサイサスリスト氏はすごくリアリストで、内心では精霊についても疑いの眼差しを向けてる人だった。

で、私の腹の底まで見透かそうとするかのような鋭い視線を向けながら、

「……本音を言わせていただければ私は、<魔法>というものを信じてはいないんです。もっと腹を割って話していただけませんか? 何を狙ってるんですか?」

だって。

いやあ、やっぱり食えない人だな。

だけど、だからこそ、かな。

「さすがですね。あなたに回りくどい言い方は通用しませんか。単刀直入に言いましょう。トヒ村の病については処分場が原因なのは確かです。なので、処分方法を変えたいんです」

「処分方法を? どのように?」

「すでにお聞き及びとは思いますが、主都において私は、排泄物を魔法で処理して畑の肥料にしていました。これは実際に効果が出ていることなので、もしお疑いでしたらそれを使っている畑を見てくださっても構いません。

その上で、処分場で処理している排泄物をすべて、肥料に変えさせてください。そうすれば病も減りますし、何より、処分場から出る<臭い>も減らせます。そして、作った肥料はサトウキビ畑で使って、それでも使いきれない分は周囲の町で売ればいい。基本的には誰も損をしない話だと思います」

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