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この世界の人達を強く責める権利は私にはないって思ってる

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ちなみに今回は、堆肥についてはほとんど利用することがなかった。

というのも、甘イモは養分が豊富すぎると逆に上手く育たないからだ。

そんな訳でしばらく堆肥のことは触れてこなかったんだけど、今度はサトウキビの畑で、堆肥もそれなりに使うことになるはずだから、またお世話になるな。

だからまず、このサイサアルメド州のウンチの最終処分場へと顔を出すことにした。

「へえ……分かりました」

馬車の御者は露骨にイヤそうな顔をしながらも取り敢えず承諾してくれた。

臭いもそうだけど、奴隷達が多く働いてる場所だから、それがまず嫌なんだろう。

正直、奴隷に対する暴行や襲撃は、日常茶飯事だ。私があまり触れてこなかったからそんなに実感はないかもしれないけど、<使い捨ての消耗品>でしかない奴隷は、仕事中に殺されたとしても、使ってる方はそんなに気にしないらしい。

『壊れたから買いかえればいい』

程度の感覚なんだって。

私はそのことについては何もできないから触れてこなかったんだ。この国の人達についてあまり悪印象を持たれるのも嫌だったし。

この国の人達にとって、奴隷は人間じゃないんだよ。ホントにただの道具。使い捨ての消耗品。値段も安い。

しかも、奴隷達の祖先に裏切られて(ということになってる)命を落とした祖先達の復讐も兼ねてのことだから、

『祖先の無念を晴らさなきゃ』

っていうある種の<義務感>すらあって、罪悪感なんか欠片も感じてないんだ。

ここでは『そういうもの』なんだよ。そんなこの国の人達を悪者扱いしたってそれに意味があるとは私は思わない。これを覆すには、世界の仕組みそのものを根底から変えてしまわないといけない。

そしてそれには、何百年もの時間が必要だろう。

分かりやすく悪者を仕立て上げて私が<正義の味方>気取りをしてたってなにも変わらないんだ。

だからその件については詳しくは触れない。奴隷達の姿を見て察してもらうしかない。

この世界で生きていくには、それを受け止める覚悟も必要なんだと思う。

<異世界>って言っても、そこは普通に人間の暮らす世界だ。決して綺麗なだけじゃない。地球と同じだよ。

そして私はそれを黙認してる。その時点で私も同罪だ。この世界の人達を強く責める権利は私にはないって思ってる。

ただそれでも、どうしても納得はできないから、エマのことみたいに、些細な抵抗はしてしまったりするんだけどさ。

この世界に来た<異世界人>達は、どうしてたんだろうな。私と同じ矛盾を抱えて生きてたのかな。

まあ、あまり気にしても仕方ないんだけどね。

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