386 / 535
しなきゃいけない作業の邪魔をするような休日の設定も違うよなあ
しおりを挟む
「今日はせっかくの休みなのに……」
アルカセリスはちょっと不満そうに言って頬を膨らませた。
私が畑に行く準備をしてるからだ。
「だから行くんだよ。役人はこないしさ」
するとアルカセリスも当たり前みたいに出掛ける用意を始めた。私についてくる気だ。
ま、いつものことだけどさ。
そうして二人して用意して、家を出る。私が手配した馬車が、家の前に待機してて、それに乗って畑へと向かう。
一時間くらいで到着すると、農家の人達が普通に作業してた。本当なら休みのはずなんだけどね。
だけど休んでなんかいられないんだよ。
王族や貴族達はその辺りのことまるで分ってない。
過重労働を強いるのは確かに違うと思うけど、だからって、しなきゃいけない作業の邪魔をするような休日の設定も違うよなあ。
無理に休んだって、どうせまたどこかで帳尻を合わせないといけなくなるし。
それに、農家の場合は、<農閑期>っていうのがあるからね。そこでまとめて休みを取ることだってできるんだよ。
ただ、この辺りの人達は、ちょっと事情が違う。甘イモが十分に育たないから、とにかく手を掛けて何とか大きくしようとして、休めないんだ。
適した農地だったら別に気しなくてもいい程度の小さな雑草まで急いで抜いて、鳥や獣についばまれて弱ったら困るっていうんで常に見張って。
だから、『休め』って言われてるのに、税を納めるためには休みなく働かなきゃいけないっていう矛盾に陥ってるんだ。
典型的な本末転倒だよね。
その辺りを解消する為にも、収穫量を増やさなきゃいけない。
「セリスは休んでて」
当たり前みたいに手伝おうとするアルカセリスに、私はそう言った。
「え…でも……」
と言う彼女に、
「休むのも仕事だよ。あなたはとにかく体を休めて。どうしてもって言うなら、みんなの食事の用意をお願い」
ここまでも、ついてきては畑仕事を手伝ってきたアルカセリスだったけど、昨日、軽い立ち眩みを起こしたりしてたからね。だから今日はとにかく休んでもらわなきゃと思った。
それでも手伝いたいという彼女の気持ちも無視したくないから、お昼もそうだけど、飲み水を用意したり、小腹がすいた時に軽くつまめるものを用意してもらうことにした。
そういうのは小さい子の役目だったりするんだけどね。で、十歳くらいになるともう畑仕事を手伝うようになるんだよ。
もちろん今も子供達が手伝ってくれてる。これまであまり触れてこなかったけど、<児童労働>もこの世界の常識だ。
それが改善されるにも百年単位の時間が必要なんだろうな。
アルカセリスはちょっと不満そうに言って頬を膨らませた。
私が畑に行く準備をしてるからだ。
「だから行くんだよ。役人はこないしさ」
するとアルカセリスも当たり前みたいに出掛ける用意を始めた。私についてくる気だ。
ま、いつものことだけどさ。
そうして二人して用意して、家を出る。私が手配した馬車が、家の前に待機してて、それに乗って畑へと向かう。
一時間くらいで到着すると、農家の人達が普通に作業してた。本当なら休みのはずなんだけどね。
だけど休んでなんかいられないんだよ。
王族や貴族達はその辺りのことまるで分ってない。
過重労働を強いるのは確かに違うと思うけど、だからって、しなきゃいけない作業の邪魔をするような休日の設定も違うよなあ。
無理に休んだって、どうせまたどこかで帳尻を合わせないといけなくなるし。
それに、農家の場合は、<農閑期>っていうのがあるからね。そこでまとめて休みを取ることだってできるんだよ。
ただ、この辺りの人達は、ちょっと事情が違う。甘イモが十分に育たないから、とにかく手を掛けて何とか大きくしようとして、休めないんだ。
適した農地だったら別に気しなくてもいい程度の小さな雑草まで急いで抜いて、鳥や獣についばまれて弱ったら困るっていうんで常に見張って。
だから、『休め』って言われてるのに、税を納めるためには休みなく働かなきゃいけないっていう矛盾に陥ってるんだ。
典型的な本末転倒だよね。
その辺りを解消する為にも、収穫量を増やさなきゃいけない。
「セリスは休んでて」
当たり前みたいに手伝おうとするアルカセリスに、私はそう言った。
「え…でも……」
と言う彼女に、
「休むのも仕事だよ。あなたはとにかく体を休めて。どうしてもって言うなら、みんなの食事の用意をお願い」
ここまでも、ついてきては畑仕事を手伝ってきたアルカセリスだったけど、昨日、軽い立ち眩みを起こしたりしてたからね。だから今日はとにかく休んでもらわなきゃと思った。
それでも手伝いたいという彼女の気持ちも無視したくないから、お昼もそうだけど、飲み水を用意したり、小腹がすいた時に軽くつまめるものを用意してもらうことにした。
そういうのは小さい子の役目だったりするんだけどね。で、十歳くらいになるともう畑仕事を手伝うようになるんだよ。
もちろん今も子供達が手伝ってくれてる。これまであまり触れてこなかったけど、<児童労働>もこの世界の常識だ。
それが改善されるにも百年単位の時間が必要なんだろうな。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
アストルムクロニカ-箱庭幻想譚-(挿し絵有り)
くまのこ
ファンタジー
これは、此処ではない場所と今ではない時代の御伽話。
滅びゆく世界から逃れてきた放浪者たちと、楽園に住む者たち。
二つの異なる世界が混じり合い新しい世界が生まれた。
そこで起きる、数多の国や文明の興亡と、それを眺める者たちの物語。
「彼」が目覚めたのは見知らぬ村の老夫婦の家だった。
過去の記憶を持たぬ「彼」は「フェリクス」と名付けられた。
優しい老夫婦から息子同然に可愛がられ、彼は村で平穏な生活を送っていた。
しかし、身に覚えのない罪を着せられたことを切っ掛けに村を出たフェリクスを待っていたのは、想像もしていなかった悲しみと、苦難の道だった。
自らが何者かを探るフェリクスが、信頼できる仲間と愛する人を得て、真実に辿り着くまで。
完結済み。ハッピーエンドです。
※7話以降でサブタイトルに「◆」が付いているものは、主人公以外のキャラクター視点のエピソードです※
※詳細なバトル描写などが出てくる可能性がある為、保険としてR-15設定しました※
※昔から脳内で温めていた世界観を形にしてみることにしました※
※あくまで御伽話です※
※固有名詞や人名などは、現代日本でも分かりやすいように翻訳したものもありますので御了承ください※
※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様でも掲載しています※
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!
つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。
他サイトにも公開中。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる