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現時点でのこの世界の人達が入手することが困難な情報を持ってる分

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私以外の<異世界人>については、詳しい情報がほとんどない。いたのは間違いなくいたらしいんだけど、今の時点で残っているのは、分かっている限りでは私一人だけだ。ネローシェシカの話でも、私より先に来た人はもう寿命をまっとうして亡くなっていたらしいし。

普通のフィクションならここで私以外の異世界人との絡みもあった方がいいんだろうな。でも現実にはそんな都合よく出会ったりしない。それほど何人も次々とくるわけじゃないそうだ。異世界人に出会ったりするのは、相当数の異世界人が来てるってことだろうな。

もしくは、召喚された異世界人のことがそれなりに把握されてるってことだろう。

ちなみにこの世界では、別に届け出の義務もないから異世界人を召喚してもそれが世間に知れることはまずない。魔法使い同士の間で噂として広まる程度だ。

たぶん、少なくとも地球と同等程度の規模を持つこの世界で、しかも情報インフラも整っていない現状じゃ、年間数人程度の異世界人が召喚されてたとしても、日本でドイツに流入した移民の中の一人について知ろうとするようなもので、まったくピンとくるようなものじゃないんじゃないかな。

少なくとも、ファルトバウゼン王国では、公式に召喚が行われたという記録はここ百年以上ないらしいしさ。その記録の最も新しいものでも、結局は失敗に終わったってなってるそうだし。

えてして、そんなもんなんだろうなあ。

ま、別に異世界人に会いたい訳でもないからいいけど。

で、これも普通なら<フラグ>なんだろうけど、そんな都合のいい展開はなかったんだよね。

あ、あと、勘違いされたら困るから補足するけど、別に、

『異世界人が有能で、この世界の人達は無能』

とか言いたいわけじゃないからね? 単に、

『現時点でのこの世界の人達が入手することが困難な情報を持ってる分、多少は有利』

ってだけの話だから。

地球もそうだったっていうことは、異世界人の力を借りなくても、いずれは自力で辿り着けてたと思う。異世界人の存在は、それを少しばかり早めたっていうだけのことだ。



なんて余計なことを考えている間に、リレが用意してくれたモグラレンコンの株が届き、いよいよ作付けに移る。

「こんなものがあったんですか…」

畑を提供してくれた代表格の人が呟くようにそう言った。

「はい。本当に適した土地でないとほとんど育たないのであまり知られてませんけど、こういうのもあるんです」

綺麗に雑草が取り除かれ耕された畑にモグラレンコンの株を植えつつ、私は応えたのだった。

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