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適した対策を工夫することとそれに必要な情報を集めることが

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担当役人にはまあ色々言われるけど、私は別に気にしないようにしてる。

彼は彼で、上から色々言われて大変なんだろうからさ。

みんな努力はしてるんだよ。知恵も絞ってる。

だけど決定的に<情報>が足りないんだ。現代地球のように電話やメールですぐにやり取りできるわけじゃない。どこかのデータベースに必要な情報の殆どが集められてて、タッチ一つで呼び出せるわけでもない。

一応、<念話>っていう手段もあるけど。これも使える人がすごく限られてて、大抵が国の重要な機関に押さえられてるからそうそう気軽には使えない。

その点で言えば、ファルトバウゼン王国は割と先進的だったな。

まあそれも、国策レベルで育成に力を入れててってしてるからだけど。

だからこの地域の農家の人達が無能なわけでも、怠けてるわけでもない。ただ適さない農地で甘イモを作らなきゃいけなくて報われない世話にリソースを消費されて、適した対策を工夫することとそれに必要な情報を集めることができなかっただけなんだ。

努力はしてないわけじゃない。<適した努力>が見付けられなかっただけで。

そしてそれは、農家の人達の責任でもないし、実は担当役人の責任でもない。彼は上の指示通りに現場を管理監督するのが仕事で、改善は彼の役目じゃない。それができればいいんだけど、それを思い付くにも情報が必要だ。

誰に責任があるかと言ったらこの地の長であるサイサスリスト氏にあるんだろうけど、情報インフラが整ってない今のこの世界でサイサスリスト氏にすべての責任を負わせるのも酷ってものじゃないかな。

そのための私なんだしさ。

前にも言ったけど、私は誰かを私の引き立て役にしたいわけじゃないんだ。

それにこの世界で働いてるのは私だけじゃないし。

実はこれまでにも私以外の<異世界人>が色々頑張ってきてて、様々な技術の発展に貢献してきたらしい。

念話の使い方も、異世界人のアイデアだという話もある。それまでは魔法使いの間でだけ秘密裏に使われてた<秘術>で、魔法使い以外の人にもその適性が見られる可能性があることを指摘したのも<異世界から来た魔法使い>だったっていう話もあるんだ。

それだけじゃない。<この世界での日本に当たる国>が大陸に進出できたのも、異世界人の働きかけがあってのことじゃないかなと私は睨んでる。

地球における日本の歴史から学んで、対処したんじゃないかってさ。力によるごり押しじゃなく、文化の面での交流から始めて、その上で<協力>という形で進出していった感じかも。

まあそれが事実かどうかは正直まだ分からないけど、可能性としては十分にあるんじゃないかな。

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