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元々作付けされてた畑で定着率七割なんて酷い有様だけど

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<モグラレンコン>の株を取り寄せる為に<早文>を出して十日。ちらほら返事が返ってきたんだけど、そのどれもが、

『用意できませんでした』

って内容のが届くだけだった。

「やれやれ、いつものことだけど心臓に悪いなあ……」

私はそうぼやきながらも残りの返事を待ちつつ、畑の方にも毎日顔を出して、いつでもモグラレンコンが植えられるように準備を整えた。

畑を耕し、土の状態を整え、同時に甘イモの畑の方も確認する。

すると、水は順調に排出され、植えた苗も七割ほどが育ち始めた。

元々作付けされてた畑で定着率七割なんて酷い有様だけど、五割を切る可能性も想定してたから、まあこんなものだ。

「本当に大丈夫なんですか…?」

畑を担当してる、陳情組代表格の人も不安気に訊いてくる。

だけど私は、

「こんなもんですよ。最初はね」

と堂々としてた。

でも内心は、ドキドキものだったけどね。

しかも、この年、急な寒気がやってきて、雪が降り始めた。

「マズい…! 苗がやられる……!」

私は畑に飛んでいって、

「ヘビゴロシの蔓を集めてください! それを畑の近くでどんどん燃やして! 焚火の熱で少しでも畑を温めてください!」

農家の人達に声を掛けて回った。

甘イモに適した農地でなら、完全に暖かくなってから作付けしても十分に大きく育つ。でもこの辺りでは祈るような想いでギリギリのタイミングで早くから作付けするんだ。

そんな努力も、自然の前では、風に吹かれるろうそくの火のように頼りない。

でも、簡単に諦める訳にはいかない。

私の呼びかけに応じて、多くの人達が林に入ってヘビゴロシの蔓を集め、それを畑の脇で燃やした。その煙が村に立ち込め、息苦しい。けどそうするしかない。

そのおかげってわけでもないんだろうけど、雪はほとんど積もらずに収まってくれたのだった。



「これは……!」

一段高くなった畑の前で、代表格の人が声を漏らす。その視線の先には、力強く、他のどの畑のそれより力強く、苗が育ち始めてた。

成功だ。

もっとも。適した農地で育ってるそれに比べるとまだまだだけどね。それでも、今までのことを思えば劇的な差だったろうな。

もう雪の心配もなくなり日差しが春のそれになりかけた頃、あの雪の日に集めて燃やしたヘビゴロシの蔓を使って、同じように高くなった<甘イモ用の畑>を次々と作った。

「これでなら、今から植えても十分に大きくなるはずです」

と言っても、やっぱり適した農地のそれに比べればきっと小さいけどね。

だけどそれでいい。今よりは増産できればいいんだから。

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