375 / 535
いくら適した土地から土を持ってきて畑に入れても
しおりを挟む
私がヘビクサの花の部分を手に取って口に放り込んだ瞬間、その場にいた人達が、
「あっ…!」
って声を上げた。
と言うのも、このヘビクサ、弱いけど花のところに(厳密にはガクの部分に)毒を溜め込んでて、食べると下痢や嘔吐、腹痛といった典型的な食中毒の症状が出るんだ。
ホントは<毒>と言うか、土中の養分が変質した上にやたらと濃度が高くなってるから、人間が持つ酵素とかでは分解できなくなるから食中毒症状を引き起こすだけで、厳密には危険な毒じゃないんだよね。
だけど、とにかく食中毒症状を引き起こすっていうんで『毒がある』として子供でも知ってるくらい有名な雑草だから、そんなものを無造作に口に放り込めば驚かれるのも無理はない。
「カリン殿、それは……っ!」
農民達の前では偉そうにしてた担当役人が、慌てて私に声を掛ける。私にもしものことがあったら責任問題だからね。
もちろん私が勝手にやったことだから彼に責任はないんだけど、<上>はそんなこと考慮してくれないから。
だけど私は当然、魔法で対処してるし、口の中でもにょもにょと<味>を確かめてからハンカチに吐き出したから食中毒にはならない。
飲み込まなければ中毒を起こすほどの濃度にはならないんだ。
しかもこれ、土の性質によって、見た目以上に<味>が変わるんだよね。
ちなみに今回のは、
「ニガ……っ!」
って思わず呟いてしまうくらいに苦かった。
ああでも、これで分かったよ。
ここの土地は、元々水捌けがあまり良くない上に、地下水が豊富すぎて水分量が高すぎるんだ。それは、あちこちから湧き水が出てることからも分かる。
これは土を改良しただけじゃ解決されない。いくら適した土地から土を持ってきて畑に入れても、地下からどんどん水分が供給されるから過剰になってしまうんだ。
それじゃ甘イモにとってもそうだし、サトウキビにとっても、好ましい環境じゃない。間違いなく適した別の作物に転換する必要がある農地だと言える。
でも、やりようがないわけでもないんだよね。
手間がかかるから普通ならやらないだけで。
だけど甘イモとサトウキビは守ると言ってしまった手前、
『はい、できませんでした。他の作物を作ります』
じゃあ、納得してもらえないよね。そんなわけで。
「分かりました。それじゃさっそく、ヘビゴロシの蔓を集めてください」
「ヘビゴロシの蔓を……?」
集まった人達は怪訝そうな顔をしながらも、近くの林に入ってヘビゴロシの蔓を集めてきてくれた。
ヘビゴロシっていうのも、典型的な嫌われ者の雑草の一種で、ものすごい速さで成長してヘビさえ絡めとって絞め殺してしまうって言われてる蔓植物だった。
基本的には支えになる木が生い茂る森や林に多く生えるんだけど、放っておくと畑にまで侵入して作物に絡み付いて枯らしてしまうんだよね。
「あっ…!」
って声を上げた。
と言うのも、このヘビクサ、弱いけど花のところに(厳密にはガクの部分に)毒を溜め込んでて、食べると下痢や嘔吐、腹痛といった典型的な食中毒の症状が出るんだ。
ホントは<毒>と言うか、土中の養分が変質した上にやたらと濃度が高くなってるから、人間が持つ酵素とかでは分解できなくなるから食中毒症状を引き起こすだけで、厳密には危険な毒じゃないんだよね。
だけど、とにかく食中毒症状を引き起こすっていうんで『毒がある』として子供でも知ってるくらい有名な雑草だから、そんなものを無造作に口に放り込めば驚かれるのも無理はない。
「カリン殿、それは……っ!」
農民達の前では偉そうにしてた担当役人が、慌てて私に声を掛ける。私にもしものことがあったら責任問題だからね。
もちろん私が勝手にやったことだから彼に責任はないんだけど、<上>はそんなこと考慮してくれないから。
だけど私は当然、魔法で対処してるし、口の中でもにょもにょと<味>を確かめてからハンカチに吐き出したから食中毒にはならない。
飲み込まなければ中毒を起こすほどの濃度にはならないんだ。
しかもこれ、土の性質によって、見た目以上に<味>が変わるんだよね。
ちなみに今回のは、
「ニガ……っ!」
って思わず呟いてしまうくらいに苦かった。
ああでも、これで分かったよ。
ここの土地は、元々水捌けがあまり良くない上に、地下水が豊富すぎて水分量が高すぎるんだ。それは、あちこちから湧き水が出てることからも分かる。
これは土を改良しただけじゃ解決されない。いくら適した土地から土を持ってきて畑に入れても、地下からどんどん水分が供給されるから過剰になってしまうんだ。
それじゃ甘イモにとってもそうだし、サトウキビにとっても、好ましい環境じゃない。間違いなく適した別の作物に転換する必要がある農地だと言える。
でも、やりようがないわけでもないんだよね。
手間がかかるから普通ならやらないだけで。
だけど甘イモとサトウキビは守ると言ってしまった手前、
『はい、できませんでした。他の作物を作ります』
じゃあ、納得してもらえないよね。そんなわけで。
「分かりました。それじゃさっそく、ヘビゴロシの蔓を集めてください」
「ヘビゴロシの蔓を……?」
集まった人達は怪訝そうな顔をしながらも、近くの林に入ってヘビゴロシの蔓を集めてきてくれた。
ヘビゴロシっていうのも、典型的な嫌われ者の雑草の一種で、ものすごい速さで成長してヘビさえ絡めとって絞め殺してしまうって言われてる蔓植物だった。
基本的には支えになる木が生い茂る森や林に多く生えるんだけど、放っておくと畑にまで侵入して作物に絡み付いて枯らしてしまうんだよね。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ どこーーーー
ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど
安全が確保されてたらの話だよそれは
犬のお散歩してたはずなのに
何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。
何だか10歳になったっぽいし
あらら
初めて書くので拙いですがよろしくお願いします
あと、こうだったら良いなー
だらけなので、ご都合主義でしかありません。。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】聖女ディアの処刑
大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる