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人間の働きかけなんて自然にとってはほとんどの場合

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アルカセリスと一緒にお風呂に入った後は、エマとも一緒にお風呂に入る。

面倒臭いと言ったら面倒臭いけど、必要なことだから。

他人は私のやってることに、『非合理的だ』とか『意味がない』とか言うと思う。でもそんなのは、実際に彼女達の傍にいて彼女達の目を見て表情を仕草を見てってしてないから言えることだと思うんだ。

アルカセリスは言うに及ばず、戸惑ってるように見えるエマでさえ、たまに手が離せなくて、

『今日は一人で入りなさい』

って言ったら明らかに寂しそうな目になるからね。戸惑ってるのも事実でも、内心ではもう一緒にお風呂に入ることを望んでるんでるんだろうな。

なにしろ彼女にとっては求めることさえ許されなかった<ぬくもり>だろうから。

私だって別に、彼女が本気で拒んでるならこんなことしてないよ。たぶん、それまでは求めることさえ許されなかったものを突然与えられるようになって、困惑してるんだと思う。果たして信じていいのかどうかも分からない他人の気遣いに、『信じたい』という気持ちと『信じちゃいけない』という気持ちとの間で揺れ動いてるのが見てると分かるんだ。

それが分かるのは、

『厚意が受け入れられて当たり前』

と私が考えてないからだと思う。

自分の厚意が受け入れられて当たり前とか思ってたら、彼女の感情が揺れ動いているのも見えなかったと思うんだ。

彼女の戸惑いについても見て見ぬふりをしていた気がする。

人間は誰しも、自分が見たくない、認めたくないものは、無意識のうちに見ないように認めないようにしてしまいがちだと思うし。

私の気持ちが彼女に届いていない可能性を、ううん、自分の気持ちを他人が理解してくれるなんて幻想だと考えてるからこそ、私が望んだとおりにエマが反応してくれてないのが分かるんだし。

『想定は常に悲観的に』

ってのも、私のポリシーだ。

上手くいかないのはむしろ当然。上手くいったら儲けもの。そう思っておくとさ、『見たくないもの』も見えてくるんだよ。

エマが、私の厚意を迷惑がってる部分も確かにあるっていうのがさ。

だけど同時に、

『迷惑がってる部分もある』

っていうのを認めるからこそ、逆に迷惑がってるだけじゃない部分も見えてくるんだ。

これは、自然に対する働きかけにも通じる部分がある気がする。

人間の働きかけなんて自然にとってはほとんどの場合、余計なお節介にしか過ぎないし、場合によっては害悪でしかないんだろう。

だけどその中でも、

『ここまでだったら受け入れてもらえる』

っていうのも確かにあるんだ。

<農>っていうのは、結局、その辺りの見極めなんだよ。

『自分のやることだけが正しい』

って押し付けたら手痛いしっぺ返しを食らう。それをわきまえてこそ、好ましい結果が得られると私は思ってるんだよね。

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