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人間の感情って本当に厄介だな。理屈や道理じゃ制御しきれない
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「え……? そんな……!」
一旦、いろいろ準備をするために家に戻った私は、アルカセリスにも当然、サイサアルメド州での農地改良の件を告げた。
すると彼女は、案の定、ショックを受けてた。
で、
「わ……私もお供します!」
だって。
まあ、そういうことを言い出すのは分かってたから別に困らないけどさ。
「気持ちは分かってあげたいけど、でも、あなたにも仕事があるでしょ? そっちを蔑ろにするような人は私は嫌いだよ」
きっぱりそう言わせてもらう。
でも彼女は、
「だけどそれじゃ、カリンさんの身の回りのお世話をする人が……!」
と食い下がる。
「大丈夫。そこはエマを連れていくから」
って言った瞬間、アルカセリスの顔がカアッと赤くなって、
「そ……そんなの、余計に心配です!! 奴隷なんかにカリンさんの身の回りのお世話とか! 汚らわしい!!」
怒髪天を突きそうな勢いで猛抗議してきた。
この国の人達の奴隷に対する感情を改めて見せ付けられたな。彼女もエマのことは多少は慣れてきた気はしてたけど、やっぱり嫌悪感そのものは消えてないんだって分かる。
さらには、
「やっぱり私も一緒に行きます! 仕事にはそっちから通います! ちょうど今の現場はサイサアルメド州との間くらいです! そっちから通っても大して変わりません!」
とまで。
はあ……やれやれ……
人間の感情って本当に厄介だな。理屈や道理じゃ制御しきれない。
だけど私もそれは分かってる。承知の上だ。人間の感情は無理に抑え付けるだけじゃいつか爆発してもっと大きな厄介事を生む。
サイサアルメド州の農民達の不満もそれだ。
『上からの命令には絶対服従』
と頭では分かってても、感情は納得してくれない。ましてや生活が困窮するくらいに追い詰められてるならなおさらだ。
人間の感情は、ある程度発散させてガス抜きをすることでないと抑えきれないんだ。
「分かった……アルカセリスも来たらいいよ。ただし、エマも連れていくからね。それは譲れない。それを承諾してくれないなら、エマも連れていかない代わりにあなたも連れていかない。私一人で行く」
「そ……そんなぁ……」
アルカセリスは不満気だけど、何もかもを聞き入れるわけにはいかない。そんなことをしてたら何でもかんでも自分の思い通りにならないと気が済まない人間になってしまうと思う。
ある程度は聞き入れてあげる代わりに、こちらの要求も聞き入れさせる。
それが大事だと思うんだ。今回は、彼女を連れていく代わりにエマも連れていくという形でね。
ちなみに、ベントについては何も心配してない。彼はちゃんと分かってくれてる。
まあもし、私の留守中に彼が女を連れ込んだりしたとしても、今回のことはある意味じゃ私の我儘だし、その程度は譲歩するよ。
もっとも、私の為に貴族のお嬢さんとの縁談を蹴るような彼だから、そういう意味でも心配ないけどね。
ってなことで、やっぱりまだ納得はし切れてないアルカセリスと、困ったように縮こまってるエマを連れて、私はサイサアルメド州へと赴任したのだった。
一旦、いろいろ準備をするために家に戻った私は、アルカセリスにも当然、サイサアルメド州での農地改良の件を告げた。
すると彼女は、案の定、ショックを受けてた。
で、
「わ……私もお供します!」
だって。
まあ、そういうことを言い出すのは分かってたから別に困らないけどさ。
「気持ちは分かってあげたいけど、でも、あなたにも仕事があるでしょ? そっちを蔑ろにするような人は私は嫌いだよ」
きっぱりそう言わせてもらう。
でも彼女は、
「だけどそれじゃ、カリンさんの身の回りのお世話をする人が……!」
と食い下がる。
「大丈夫。そこはエマを連れていくから」
って言った瞬間、アルカセリスの顔がカアッと赤くなって、
「そ……そんなの、余計に心配です!! 奴隷なんかにカリンさんの身の回りのお世話とか! 汚らわしい!!」
怒髪天を突きそうな勢いで猛抗議してきた。
この国の人達の奴隷に対する感情を改めて見せ付けられたな。彼女もエマのことは多少は慣れてきた気はしてたけど、やっぱり嫌悪感そのものは消えてないんだって分かる。
さらには、
「やっぱり私も一緒に行きます! 仕事にはそっちから通います! ちょうど今の現場はサイサアルメド州との間くらいです! そっちから通っても大して変わりません!」
とまで。
はあ……やれやれ……
人間の感情って本当に厄介だな。理屈や道理じゃ制御しきれない。
だけど私もそれは分かってる。承知の上だ。人間の感情は無理に抑え付けるだけじゃいつか爆発してもっと大きな厄介事を生む。
サイサアルメド州の農民達の不満もそれだ。
『上からの命令には絶対服従』
と頭では分かってても、感情は納得してくれない。ましてや生活が困窮するくらいに追い詰められてるならなおさらだ。
人間の感情は、ある程度発散させてガス抜きをすることでないと抑えきれないんだ。
「分かった……アルカセリスも来たらいいよ。ただし、エマも連れていくからね。それは譲れない。それを承諾してくれないなら、エマも連れていかない代わりにあなたも連れていかない。私一人で行く」
「そ……そんなぁ……」
アルカセリスは不満気だけど、何もかもを聞き入れるわけにはいかない。そんなことをしてたら何でもかんでも自分の思い通りにならないと気が済まない人間になってしまうと思う。
ある程度は聞き入れてあげる代わりに、こちらの要求も聞き入れさせる。
それが大事だと思うんだ。今回は、彼女を連れていく代わりにエマも連れていくという形でね。
ちなみに、ベントについては何も心配してない。彼はちゃんと分かってくれてる。
まあもし、私の留守中に彼が女を連れ込んだりしたとしても、今回のことはある意味じゃ私の我儘だし、その程度は譲歩するよ。
もっとも、私の為に貴族のお嬢さんとの縁談を蹴るような彼だから、そういう意味でも心配ないけどね。
ってなことで、やっぱりまだ納得はし切れてないアルカセリスと、困ったように縮こまってるエマを連れて、私はサイサアルメド州へと赴任したのだった。
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