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人間の世界ってそうやって出来上がってるんじゃないのかな
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自分達よりずっと上の立場の人間のところに直接陳情に行くなんて、場合によっては不敬罪とか、下手すると国家反逆罪で死罪ってことにもなりかねないことをせずにいられないほど、私のところに来た農民達は追い詰められていたんだと思う。
それほどの苦しみに目を向けずに放っておくのは、適した農地を与えられた農民に対する妬みとかにもなり、農民同士の対立へと繋がっていくこともあるんじゃないかな。
実際それで暴動になった事例もあるそうだし。
だけどそれでも、サイサスリスト氏のような立場の人は、あくまで<全体>を見通さなきゃいけないんだ。
でも逆に私は、全体を見通せるような器じゃない。目先のことを地道にやっていくしか能のない人間だ。
でもそれも必要なんだと思うんだ。『どっちが正しい』とか『どっちが間違ってる』じゃなくて、どっちも必要なんだろうな。
それぞれに適した人間が力を発揮することで、いろんなことが回っていく。
人間の世界ってそうやって出来上がってるんじゃないのかな。
「……そこまで言うのなら、お手並み拝見させてもらおう。まずは不満を抱えた農民達の件を解決してみせろ」
サイサスリスト氏も、一部の農民がそういう形で不満を抱えているのは把握してた。しかしそれについては強権発動って形で抑え込んできたんだ。
そうするしか外に方法がなかったから。
農地の改良はもちろん試してきたけど、十分な効果が得られず、と言うか、改良してきたから多少なりとも収穫できてきたんだけど、それでも不満を解消できるほどのものじゃなかったみたいだね。
かと言って他の作物を作ったところで上手くいく保証もない。
そうやって不満を溜め込みながらも危ういバランスでやってきたところに、私が主都周辺の農地の改良を行ってて成果も出てるって話を噂で知って、
『このまま座して死を待つよりは』
ってことで一か八かに出たんだろうな。
私としてはそういう彼らの判断にも共感できる。
その一方で、サイサスリスト氏の立場も理解できる。
私はいわば、上と下とを繋ぐ<中間管理職>のような立場でもある。
そういう、いろんな立場の人間がきちんと自分の役目を果たしてこそ物事っていうのは上手く回っていくと思うんだ。
まあ、それでも完璧にはなれないと思うけどさ。だけどやらなきゃそれこそみんな共倒れだ。
私にできることで役に立てるんなら、やらない理由がない。
そういう訳で、主都周辺の農民達への指導とかについてはベントに任せ、私はここ、サイサアルメド州での農地改良に力を入れることになった。
私一人で主都もここもとなったらさすがに無理があるけど、ベントがいるからね。
ただ、毎日自宅から通うのは無理があるから、当面、こっちに居つくことになる。
そこで、サイサスリスト氏の手配で家を用意してもらったのだった。
それほどの苦しみに目を向けずに放っておくのは、適した農地を与えられた農民に対する妬みとかにもなり、農民同士の対立へと繋がっていくこともあるんじゃないかな。
実際それで暴動になった事例もあるそうだし。
だけどそれでも、サイサスリスト氏のような立場の人は、あくまで<全体>を見通さなきゃいけないんだ。
でも逆に私は、全体を見通せるような器じゃない。目先のことを地道にやっていくしか能のない人間だ。
でもそれも必要なんだと思うんだ。『どっちが正しい』とか『どっちが間違ってる』じゃなくて、どっちも必要なんだろうな。
それぞれに適した人間が力を発揮することで、いろんなことが回っていく。
人間の世界ってそうやって出来上がってるんじゃないのかな。
「……そこまで言うのなら、お手並み拝見させてもらおう。まずは不満を抱えた農民達の件を解決してみせろ」
サイサスリスト氏も、一部の農民がそういう形で不満を抱えているのは把握してた。しかしそれについては強権発動って形で抑え込んできたんだ。
そうするしか外に方法がなかったから。
農地の改良はもちろん試してきたけど、十分な効果が得られず、と言うか、改良してきたから多少なりとも収穫できてきたんだけど、それでも不満を解消できるほどのものじゃなかったみたいだね。
かと言って他の作物を作ったところで上手くいく保証もない。
そうやって不満を溜め込みながらも危ういバランスでやってきたところに、私が主都周辺の農地の改良を行ってて成果も出てるって話を噂で知って、
『このまま座して死を待つよりは』
ってことで一か八かに出たんだろうな。
私としてはそういう彼らの判断にも共感できる。
その一方で、サイサスリスト氏の立場も理解できる。
私はいわば、上と下とを繋ぐ<中間管理職>のような立場でもある。
そういう、いろんな立場の人間がきちんと自分の役目を果たしてこそ物事っていうのは上手く回っていくと思うんだ。
まあ、それでも完璧にはなれないと思うけどさ。だけどやらなきゃそれこそみんな共倒れだ。
私にできることで役に立てるんなら、やらない理由がない。
そういう訳で、主都周辺の農民達への指導とかについてはベントに任せ、私はここ、サイサアルメド州での農地改良に力を入れることになった。
私一人で主都もここもとなったらさすがに無理があるけど、ベントがいるからね。
ただ、毎日自宅から通うのは無理があるから、当面、こっちに居つくことになる。
そこで、サイサスリスト氏の手配で家を用意してもらったのだった。
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