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偉そうに言うんなら、まず自分がそれを実践してみせなきゃね

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『自分の意図が伝わらないのは相手のせいじゃなくて、自分が伝える努力を怠ったから』

私はそれを肝に銘じてる。

もちろん、そもそも理解する気がなくて、自分がいくら努力してもどうにもならない相手っていうのがいることも分かってる。

『努力さえすれば必ず伝わる』

なんていう理想論を振りかざす気もないんだ。ただ、努力もしないで最初から『伝わるわけがない』と諦めてたら、それこそ伝わるものも伝わらないからさ。



というわけで、私は早速、<伝える努力>を試されることになった。

『偉そうに言うんなら、まず自分がそれを実践してみせなきゃね』

ってことなんだろうな。

相手はあの、

<ごねてる役人>

だった。

「カリンと直接話をさせろ。まずはそこからだ」

何度かベントが話をして、でも埒が明かなくて、向こうがそんなことを言ってきたらしい。

「すいません。任せてくださいと言っておきながら結局カリンの手を煩わせることになってしまった…」

ベントは申し訳なさそうに言うけど、

「こうなることは十分に想定されてたからね。ベントが気にすることじゃないよ」

と、馬車で片道四時間ほどの道のりを移動しながら、私は笑った。

そうだ。元々こうなる可能性は考えてた。

『責任者を出せ!』

ってごねるタイプは必ずいる。今回のもつまりそれだということだ。

今日は、アルカセリスは灌漑工事の現場に行っててついてこない。代わりに、ティンクフルムが同行してくれた。まあ、役所の方に状況を説明しなきゃいけないから、それも兼ねた<監視役>かな。

とかなんとか考えているうちに、目的の町に着いた。

その町は、主都から片道四時間(と言うか私達が住んでるのは主都でも割と外れの辺りだから、王城からだとさらに一時間かかるけど)と比較的近い距離にありながら、戦略的にあまり重要でない位置に存在することもあって、昔から割と放っておかれることが多く、それもあって自主自立の気運が高い土地柄だったらしい。

そこを統括する役人は、日本で昔にあった<国司こくし>っていう役職に近い感じなのかな。この辺りのいくつかの町をまとめて治めてて、かなり大きな権限を持ってるそうだ。

正直、<小さな国の王様>と言っても差し支えないかもしれない。

そうは言っても役人であることには違いないので、一応、国の政策には従う義務もある。あるんだけど、この辺りはかなり<建前>って感じにもなってるみたい。

統括してる中でも最も主都に近い町に役所を置いてるのも、ある意味、建前みたいだね。なにしろ、最も遠い町の外れとなったら、ここからさらに八時間かかるらしいから。

これでもまだ<地方>としては近い位置にある。国の端から端まで移動するには、朝から夜まで(約十八時間)<駅馬車>で移動して三日かかるくらいだからね。駅馬車の平均速度が八キロ強ほどだから、長手方向には約四百五十キロってところなのか。

今の日本と比べても小さいと思うかもだけど、昔は日本だっていくつかの小さな<国>に分かれてたわけだし、その感じだよ。

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