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相手のせいじゃなくて、あくまで私の責任なんだよね

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私がいた大学で、こんなことがあったな。

あるスポーツ系のクラブで、監督が、

「あの選手を潰せ」

って指示を出したらしいんだ。で、その指示を聞いた選手は相手チームの柱になってた選手にラフプレーを仕掛けて、怪我をさせて退場に追い込んだんだって。

でもそれが問題になって、大学側は選手が監督の指示を拡大解釈したことが原因だってことにして、ラフプレーを行った選手を謹慎処分にして、クラブからも除籍したんだ。

で、指示を出した監督の方は、

『自分の出した指示を選手の方が誤解した』

と弁明して、それが通ってしまったらしい。

ただ、誤解を招かない具体的な内容じゃなかったのはマズかったってことで厳重注意を受けたらしいけどさ。

それは、よくある話だって聞いた。表沙汰になるかならないかの違いだけで、特に相手の選手と直接ぶつかることもあるスポーツだと、普通にあることだとも聞いたな。

だけど私はそれを聞いて、不信感しか抱かなかった。

聞いた方がどうにでも解釈できる曖昧な指示を出して、それが問題になったら、

『誤解した方が悪い』

なんて、何のための<監督>なの? 選手を『管理監督する』のが仕事じゃないの? その、管理監督する側が曖昧な指示を出したことで問題になったのなら、それは監督の責任じゃないの?

<誤解を招かない的確な指示も出せない監督>なんて、監督としての資質があるって言えるの?

もちろん人間だから失敗だってするし間違いだって犯すよ。だけどさ、自分の失敗の責任を相手に擦り付けて自分は注意だけで済ますなんて、とてもまともな大人のすることとは思えない。

ましてや、万が一問題になった時に言い逃れができるようにわざと曖昧な指示を出したんだとしたら、それは卑怯者以外の何者でもないと思うんだ。

ああ、こんなこと言ったら、その監督と同じ立場だったり監督の主張に共感する人達に袋叩きにされるだろうな。

でも、それでも、いや、それだからこそ私の不信感はますます大きくなるんだよね。自分達の考えが果たして本当に正しいのかどうか常に客観的に見ることもできないような人達がそれなりの立場にいたりするっていうのがおぞましい。

確かに、私が聞いたその事例だって本当に選手の方が勝手な解釈をしただけなのかもしれない。

だけど、その曖昧な指示を出した監督が、自分の指示が曖昧だったことを反省し、それについて責任を取る姿勢を見せなかったという事実だけでも、

『あ~。この人は信用できないわあ……』

って思わせるんだよね。

信頼っていうのは、そういうところから崩れるんだよ。

私も人間だから完璧じゃない。何か、自分が意図してない失敗をしてそれが原因で信頼を失ったりするかもしれない。

でもそれは、相手のせいじゃなくて、あくまで私の責任なんだよね。

これを肝に銘じておきたいと思うんだ。

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