何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって？ そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが！！

貴族とかにやたら口出しされるとムッとなってしまうしさ

「さっそく、例の役人にお目通り願って話をさせていただいたのですが、どうやら一筋縄では行かない方のようですね」

私が作ったチキンライスもどきで夕食にしながら、ベントが＜報告＞してくれた。

「もとより、王族や貴族に対する不信感が相当募っていたようです。そこにまた、一方的に『余所者の指示に従え』的な通達があったことで、かなり感情を拗らせている感じでしょうか」

「そうか……」

ベントの報告に自分が苦笑いを浮かべてしまうのが分かってしまった。

でもまあ、その役人の気持ちも想像できなくもないかな。

わたしも、貴族とかにやたら口出しされるとムッとなってしまうしさ。

そんな私を見詰め、ベントが続ける。

「でも、交渉の余地はあると感じました。時間はかかるでしょうが。私に任せていただけますか？」

自分の胸に手を当てて、穏やかに、でも毅然とした態度でそう言う彼がすごく頼もしい。

「もちろんだよ。そっちは任せる。でももし、私の力が必要になったらいつでも言って。あと、もう言うまでもないとは思うけど、報告・連絡・相談は欠かさずに」

「はい、承知しています」

ああ、いいなあ、この感じ。頼れる仲間がいるって本当にありがたい。

ただ、見詰め合う私とベントの姿に、アルカセリスは、

「む～っ！」

って唇を尖らせて不満顔だ。

だけど、それでいい。そうやって不満があることを表に出してくれるのはむしろありがたい。厄介なのは、そういう本音を見せずにただ我慢してて、それである時突然キレるタイプ。これは本当に困る。

キレる前に対処できればいいんだけど、実際にキレてやっと何を我慢してたのか分かるっていうのは始末が悪い。

こういうのも、報告・連絡・相談だよね。

ただひたすら我儘放題なのも困りものだけど、ちゃんと言ってくれなくちゃ表に出してくれなくちゃ、そんなの他人に伝わるわけがない。

こういうことからも、

『他人の気持ちが分かる』

なんてのが嘘だってよく分かるんだよね。他人の気持ちが分かるんなら、当然、不満を抱えてる人の気持ちも分かるわけで、それで爆発する前に対処しないっていうのは、分かってて対処しなかったのなら、それはただの怠慢だと思う。

もちろん、すべての人にいちいち構ってられないのは当然だけど、自分のすぐ身近な人のことまで放っておくのはやっぱり怠慢だと思うんだ。

だけど、そもそも自分以外の人間の気持ちなんて分からないんだから、きちんと伝えてくれなきゃ後手に回るのも当然だ。

＜我慢強い＞＜忍耐強い＞っていうのはある条件下では美徳だけど、それが常に必ずそうかって言ったら、実はそうでもないんだよね。