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こっちでできた<家族>については、縁を切りたくないな

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エマと同じく奴隷だったリレ達のことは、今でも気になってる。

エマのことは、

『一生手放さない』

とか言いながらリレ達の下を去った私を、

『矛盾している!』

と非難する人もいるだろう。

だけど、リレ達ならもう大丈夫だ。

だって、手紙が届いたから。アウラクレアからだけどね。

その手紙の中に、リレ達が今も頑張ってる様子が詳細に記されてた。カリン商会を退職したアウラクレアだけど、今でも<相談役>として関わることはあって、実際、それで報酬も受け取ってるらしかった。

だからホントに<顧問>とか<相談役>とかって立場なんだろうな。

そんな彼女のところには、ファルトバウゼン王国のカリン商会だけじゃなく、ムッフクボルド共和国を構成する小国、プリエセルエラ公国の<アリエ商会>や、ヘルデカイラス公国の<タルハ商会>とかの<従業員>のことも伝わってくる。

特にアリエ商会については、リレが実質的な代表として機能してるそうだ。頑張ってるんだな。

さすがに同じくムッフクボルド共和国を構成する小国、メトラカリオス公国の<ミスト商会>は、メトラカリオス陛下を代表とした完全な別会社だから詳しい情報は伝わってこないそうだけど、それでも順調だって話だった。

そう、リレはもう、私の手を離れて自分で立派に生きてる。『公式には奴隷は存在しないことになってる』ムッフクボルド共和国だからこそのことでも、実際にそうなんだから。

だったら<離れて暮らしてる家族>みたいなものじゃないのかな。

リレ達のことは今でも忘れてない。

本当は、エマもそうなってほしいんだけどね。

ただ、少なくともこの国にいる間は無理だろうな。ファルトバウゼン王国以上に奴隷達を取り巻く状況が悪いから。

可能なら、いずれアリエ商会と合流してそこで社員として雇ってもらうことも考えたい。

『一生手放さない』というのは、『一生手元に置く』っていう意味じゃないんだ。あくまで<家族みたいなもの>という意味でさ。家族は、離れてたって家族だから。

もっとも、こんなこと、昔はぜんぜん思ってなかった。それどころか、

『さっさと自立してあんな人達とは縁を切りたい』

って本気で思ってた。

『縁を切る』っていう点では、それこそ物理的に縁が切れちゃったから願いが叶った形だけど、それは本音で言わせてもらえば嬉しいけど、こっちでできた<家族>については、縁を切りたくないな。

アウラクレアともリレ達とも、離れて暮らしてても繋がってる。

その実感がすごく嬉しい。

エマともそうなりたいってことなんだ。

そのためにも、彼女には自分の力で生きていける能力を身に付けてもらわなきゃ、ね。

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