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それがなければ、人間が自分の想いを行動に移すことも

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私がエマの辛そうな顔を見たくないというのは、あくまで私の個人的な願望に過ぎない。

『それが人道的だ』とか、『人類の幸福につながる』とか、そんな大仰な<お題目>はどうでもいいんだ。

私は単に、私がそういうのを見ていたくないというだけでやってるだけなんだ。

言ってしまえばただの<エゴ>でしかない。

でも、人間はエゴを切り離しては存在できないんだろうなとも私は思ってる。

重要なのは、自分のその<エゴ>をエゴとして理解してわきまえた上でやってるかどうかってことなのかなって気がしてる。

でないと、際限なく他人に押し付けることになると思うし。

私は、エマに、ちょっとでも人間として生まれてきたことを喜んでほしい。この世には苦しみしかないわけじゃないってことを知ってほしい。

それは紛れもない私のエゴ。

だけどさ、親が子供を生むっていうのさえ、言ってしまえば親のエゴだよね。私はそれを恨んだことさえあった。

『頼んでもないのに何で生んだ!?』

と、口にはできないけど内心ずっとそう思ってたこともある。

でもね、今はもう、生まれてきて良かったと思うよ。両親のことは許してないけど、今でも恨んでるけど、それでも今は幸せなんだ。

そうやって幸せになれるチャンスは確かにある。どんなに不幸しかない人生に思えても、チャンスだけは確かにあるんだ。

私は自分でそれを確かめた。あんな両親の下に生まれて、生まれてきたことを何度も呪って、やっと自分の力で生きていけるようになってさあこれからって時に訳も分からずこの世界に放り出されて、

『神様は私になんの恨みがあるの!?』

と何度も泣いて、それでも今は幸せなんだ。

そしてそれは、誰かが助けてくれたから。

もちろん、ただ助けられてばかりじゃダメだけど、最後には自分の力で立つようにしないといけないけど、そういう意味じゃ、

『自分を救えるのは結局自分だけ』

ってことなんだと思うけど、

きっかけや、自分の力だけじゃどうにもできない部分で誰かに助けてもらってるのも事実なんだ。

しかもそれは、多くの場合、その人の<エゴ>によって成立してる。

『手を貸してあげたい』

『力になってあげたい』

という、ささやかなエゴでね。

それも事実だと思うんだ。

だから私は、エゴの全てを否定はしない。過剰に押し付けるのは悪手でも、それがなければ、人間が自分の想いを行動に移すこともできないと思うんだ。

大事なのはあくまで、その自分の決断と行動に責任を持つことなんじゃないかな。

私はもう、エマを一生、手放さない覚悟を決めてる。

それと同時に、彼女がもし、自分の意志で私の下を離れていくのなら、その決断は大事にしたいと思うけどね。

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