何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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諦めてしまいそうになるのも確かでも

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ティンクラウラの家に食事を呼ばれに行ったのもまあ<仕事>の内と言えばそうなんだよね。

<人付き合い>そのものが仕事に含まれるんだ。

たくさんの人に動いてもらわないといけない仕事だと。

以前は、こういう部分もメロエリータにおんぶにだっこだった。今でもかなりベントに助けてもらってる。今回は平民であるティンクラウラのうちだったから、逆に向こうが畏まってしまったけど、それなりの相手ときちんとした席に着くとなると、いまだにおぼつかないのが正直なところだ。

そういう部分をベントがフォローしてくれるんだ。

自分が不得手とするところを助けてくれる人がいる。それは本当にありがたい。

自分一人で何でもできるっていうのは確かに理想かもしれないけど、現実にはそんな人、まずいない。完璧超人にも思えるメロエリータだって、実は平民や奴隷が相手だと心を開いてもらうのは簡単じゃなかったらしい。

「お前がそうやって奴隷の心を易々と掴んでしまうことが私には不思議でならん」

そんな風に言われたこともある。

と言っても、私から見たら十分、上手くやってたと思うけどね。ただ、メロエリータ自身はそれでは納得してなかったらしい。

志が高いと言うか何と言うか……

だから私も、苦手なのは苦手でも、苦手ななりに上手くやろうと努力はしてるつもりなんだ。できないことをできるようになろうとしてそればかりに腐心してしまうと得意なことまで疎かになったりするけど、だからってできないことをできないままで放っておくといつまで経ってもできないままだしね。

それに、苦手だと思ってたことでもやってみると案外できちゃうことだってあるしさ。

メロエリータが言ってた、

『奴隷の心を易々と掴む』

っていうのだって、私にできるとは元々は思ってなかったんだ。元の世界ではとっちかって言うと<コミュ障>って言われるタイプだったし。

ただ、

『自分が両親や兄からされて嫌だったこと』

をしないように心掛けただけなんだよね。

両親や兄にとって私は。ある意味では奴隷みたいなものだったんだろう。そうして私を好き勝手に思い通りに操ろうとする両親や兄に反発して、私は心を閉ざした。

なら、それと逆にすればいいんじゃないかな?っていうのが元々なんだ。

今、エマに対してやってるのもそれだ。

時間は掛かりそうだけど、手応えは掴んでる。『無理』と諦めてしまう必要はないとも思う。諦めてしまいそうになるのも確かでも、同時に、『大丈夫、やれる』とも感じるんだ。

こうして私は、努力を続ける。それが報われるかどうかはそうなってみないと分からないけど、努力もせずにただ『どうせ自分なんて』と泣き言ばかりこぼすのは嫌なんだ。

それは、自分から負けを認めることだからね。

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