何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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それによって潰されることを私は断固拒否する

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今日もエマと一緒にお風呂に入って、彼女の姿を改めて目と心に焼き付けて、この世界の現実を理解に努めた。

変わってほしいけれどおそらく私が生きてる間には大きく変わることはないであろう社会。

それでも一歩を踏み出さなければそれこそ何も変わらない。

社会がどんなにエマ達を<物>扱いしようが、こうして接してみれば間違いなく彼女が人間だってことが分かる。

人間を人間扱いしない矛盾。そうやって現実に目を背けてて、自分達も本当に幸せになれると思ってるんだろうか。

他人を蔑ろにすれば、自分が他人から蔑ろにされることも認めなくちゃいけないはずなんだ。自分ばかりが一方的に良い目を見るなんてそんなムシのいい現実、あるわけないよね。

こんな風に奴隷を作って虐げれば、自分達も何かの事情で奴隷の立場に堕ちた時、同じように扱われることを認めなきゃいけないんだよ。

私はそんなの真っ平御免だから。

だからエマのこともただ人間として扱いたいだけなんだ。

でもまだまだそうはいかないのが現実。

そんな現実を目の当たりにしながらも、それによって潰されることを私は断固拒否する。その現実の中で、私は私なりに自分の信念を貫く。

私なりのやり方で、彼女を人間と見做す。

そう決意を新たにし、お風呂から上がった。



二日後。遂に年が明けた。

「あけましておめでとうございます」

「おめでとうございます」

朝、ベントとそう挨拶を交わす。

ファルトバウゼン王国にいた頃には殆どすることのなかった挨拶だけど、ベントには、

「私の故郷ではそう挨拶するんだ」

と伝えてあったからね。バンクレンチ達も、かなり軽い感じではあったけど、『おめでとうございま~す』とか言ってくれてたな。

一瞬だけど。

ここでも、日本ほど丁寧な新年の挨拶はないらしい。

「今年もよろしく」

的な割と簡単な挨拶があるだけだ。もしかしたら昔は丁寧にしてたかもだけど、いろいろ他の民族の影響を受けてるうちに、手間のかかる丁寧な挨拶は廃れてしまったのかもしれない。

ここの人達の祖先は、いつ寝首をかかれるか分からないような暮らしを長く続けてただろうしさ。

でもまあ、あまり馬鹿丁寧なのは私も性に合わないし、簡単な感じで済むのはありがたい。

これといって新年の挨拶回りみたいなのもないらしい。あれって結構負担になるんだよね。

という訳で、二日ばかりは家でゆっくりさせてもらった。

もっとも、アルカセリスは当然来てるし(使用人としての仕事は休みって言ってあったんだけど)、ティンクラウラも遊びに来てて、何だかんだと賑やかではあったけどさ。



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