何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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私の故郷でも似たようなのを飾る風習があったから

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「皆さんの頑張りのおかげで無事報告も終えられました。お疲れ様でした。来年もよろしくお願いします」

報告を終えて<仕事納め>の挨拶で、ブルイファリドがいかにもな感じで締めくくった。この国でもこんな感じなんだね。

ちなみにファルトバウゼン王国だと年末年始の時期は厳かに祝う感じで、なんかすごく静かだったなっていう印象がある。それよりは、春先の頃の方が何となく賑やかだったから、実質的には春を迎える辺りが<新年>って感じだったみたい。

この辺りもやっぱり国や地域ごとに違うんだろう。

詰所にも、門松とかは飾らないけど、鏡餅っぽい物が飾られてたりする。

「私の故郷でも似たようなのを飾る風習があったから、なんか懐かしいな」

「へえ! そうなんですか? あ、でも、この風習って、私達の遠い祖先がやってたのを細々と伝えてるっていう話ですから、もしかしたら同じのが伝わってるのかもしれませんね」

帰り支度をしながらアルカセリスとそんな話もしたり。

『日本でも鏡餅って平安時代の頃にはあったっていう話をちらっと聞いたことがある気がする。だとしたらこうして伝わってても不思議じゃないのか……』

なんてことを頭の隅で考えつつ、

「良いお年を」

って、なんか懐かしい感じもする挨拶を皆と交わして、私はアルカセリスと一緒に詰所を後にした。



「おかえりなさい!」

家の近くまで帰ってくると、そう言って出迎えてくれたのはティンクラウラだった。

「うちで作ったお餅をカリンさんにもって、お母さんが」

と、包みに入った、まさに<お餅>を広げて見せてくれた。

「ありがとう。いただくよ。お雑煮にでも入れようかな」

「オゾウニ?」

「ああ、私の故郷の郷土料理の一つだよ。味噌を溶いた汁に、お餅や野菜を具として入れたものなんだ」

「あ、サイニみたいなものですね」

「そうだね」

<サイニ>というのは、この国の伝統料理の一つで、見た目にも味的にもなるほど<雑煮>だった。ただ、日本では正月に食べるものを<雑煮>と呼んで、他の時期に食べる似たような汁物はまた別の名前で呼ばれてたみたいだけど、ここでは時期に関係なくサイニらしい。

私は勝手に、<菜煮>だからサイニなんだろうなと思ってたりする。日本の雑煮以上に野菜がたっぷり入ってるイメージで、餅はむしろ食感にアクセントをつける為の脇役って感じかな。

だけど、私としては餅が存在感を主張する、日本式の<雑煮>を作ろうかなと思った。

味噌は豊富にあるから好きにさせてもらおう。

食文化的には日本に近いのが本当に助かってる。ファルトバウゼン王国にいた頃には米すらまともに食べられなかったからね。

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