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こんな汚いもの、いつまで取っておく気ですか?
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エマにとっては母親の形見だった包帯を捨てずに置けたことに、私は自分を褒めたいとさえ思った。
あんな汚いボロボロの包帯、普段の私なら容赦なく捨ててたはずだ。なのにあれについては、どうしてか捨てることができなかった。
別に予感が働いたとは言わない。そんな都合の良いことが起こったとは思わない。でも、現実に彼女の母親の形見でもあるそれを捨てずにいられたのは紛れもない事実だったからね。何か引っかかるものがあった気がするのも確かなんだ。
「ベントも、エマの包帯を捨てないでいてくれてありがと」
そうだった。もし私が捨てなかったとしても彼が捨ててた可能性はある訳で、それについても感謝したい。
たとえくだらない感傷と言われても、人の気持ちをまるで無視して時には嘲笑うような人間ではいたくないからさ。
そんな私を、彼は受け止めてくれる。
「カリンが捨てずにいたものを私が無断で捨てる訳にはいきませんからね」
なんて、そう思ってくれることがすごいんだよ。
普通なら、
『こんな汚いもの、いつまで取っておく気ですか?』
って言ってくるところじゃないかな。
でも、ベント以上に不思議なのが、アルカセリスだ。何度かお風呂場の掃除もしてもらったのに、彼女も古い包帯を捨てなかった。
それについて、本人に理由を訊いてみる。
「カリンさんが捨てるように言ってたら捨ててました。言われなかったから、捨てない方がいいのかなって」
ベントとほとんど同じ理由。
それを聞いた時、
『ああ……彼女とはこれからも上手くやっていけるな』
って思った。
こういう感性は、教えたって身に付くものじゃないと思う。
本人が元々そういう素養を持ってないとピンとこないと思うんだ。
この辺りの感覚が合わない人って、『捨てるな』って言ってても捨てたりするんだよね。
自分の感覚で勝手に判断するんだ。そしてそれを正しいと思ってる。『気を利かした』と思ってたりする。
自分は正しいことをしてると思ってるから、
『どうして勝手に捨てたの?』
みたいに問い質したら機嫌を損ねて、
『なんでそんな風に言われなきゃいけないの?』
的に逆ギレするんだよね。『捨てるな』と言ったものを勝手に捨てられたら怒って当然だと思うんだけど、自分を正しいと思い込んでる人は、自分の勝手な判断を<気遣い>だと考えてて、それを評価しないことこそが間違ってると思ってたりするみたいなんだよ。
こっちは『勝手な判断をしたこと』について指摘してるのに、その勝手な判断をすることが正しいと思ってるんだからなあ。
そりゃ噛み合う訳ないって。
あんな汚いボロボロの包帯、普段の私なら容赦なく捨ててたはずだ。なのにあれについては、どうしてか捨てることができなかった。
別に予感が働いたとは言わない。そんな都合の良いことが起こったとは思わない。でも、現実に彼女の母親の形見でもあるそれを捨てずにいられたのは紛れもない事実だったからね。何か引っかかるものがあった気がするのも確かなんだ。
「ベントも、エマの包帯を捨てないでいてくれてありがと」
そうだった。もし私が捨てなかったとしても彼が捨ててた可能性はある訳で、それについても感謝したい。
たとえくだらない感傷と言われても、人の気持ちをまるで無視して時には嘲笑うような人間ではいたくないからさ。
そんな私を、彼は受け止めてくれる。
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なんて、そう思ってくれることがすごいんだよ。
普通なら、
『こんな汚いもの、いつまで取っておく気ですか?』
って言ってくるところじゃないかな。
でも、ベント以上に不思議なのが、アルカセリスだ。何度かお風呂場の掃除もしてもらったのに、彼女も古い包帯を捨てなかった。
それについて、本人に理由を訊いてみる。
「カリンさんが捨てるように言ってたら捨ててました。言われなかったから、捨てない方がいいのかなって」
ベントとほとんど同じ理由。
それを聞いた時、
『ああ……彼女とはこれからも上手くやっていけるな』
って思った。
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自分の感覚で勝手に判断するんだ。そしてそれを正しいと思ってる。『気を利かした』と思ってたりする。
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『どうして勝手に捨てたの?』
みたいに問い質したら機嫌を損ねて、
『なんでそんな風に言われなきゃいけないの?』
的に逆ギレするんだよね。『捨てるな』と言ったものを勝手に捨てられたら怒って当然だと思うんだけど、自分を正しいと思い込んでる人は、自分の勝手な判断を<気遣い>だと考えてて、それを評価しないことこそが間違ってると思ってたりするみたいなんだよ。
こっちは『勝手な判断をしたこと』について指摘してるのに、その勝手な判断をすることが正しいと思ってるんだからなあ。
そりゃ噛み合う訳ないって。
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