何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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これが彼女にとって<当たり前>になるには

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しばらく様子を見てると、エマがすごく集中し始めたのが分かった。

うん。いい感じだ。

アルカセリスと同じだよね。だからエマもアルカセリスと同じ<人間>なんだ。家畜じゃない。

だけどそれが分かってもらえるようになるには、まだ何百年もかかるのか……

遠いなあ……

なーんて、私が気にしてても仕方ないんだけどさ。

その後結局、大きめの蝋燭が一本燃え尽きるまで、エマは書き取りを続けてくれた。

「じゃ、蝋燭もそろそろ消えるし、今日はここまでね。明日もやるから。あ、それと今日は一緒にお風呂入るからね」

「…え…っ?」

私の言葉にエマが慌てる。

それには取り合わず、

「ついてきなさい」

と言い放って立ち上がった。

エマもおずおずと立ち上がって、私の後についてくる。

お風呂は、使用人用のをベントに沸かしてもらってた。と言っても、お湯そのものは釜の方で常時沸かした状態だから、湯船の方の湯加減を調節してもらっただけなんだけどさ。

脱衣所で私が服を脱ぎ始めても戸惑ってる様子だったから、

「さっさと脱ぎなさい…!」

って命令する。

本当に指示されないと何もできないんだ。ただただ命令に従うってのをやってると、それこそ命令されなきゃ何もできなくなるんだろうな。

二人とも裸になっても、彼女は俯いたままで私のことを見ようともしない。下手に見たら怒られると思ってるのが伝わってくる。

いちいち気にしても仕方ないので私は先に浴室に入って、お湯で体を流し出した。

「こっちに来なさい」

エマを呼びつけて私の前に座らせ、お湯を掛ける。

その時にも怯えてビクっと体を震わせた。

私のところに来てからもう一ヶ月経つっていうのに、いまだにそれだ。魂の奥底まで恐怖が植え付けられることの恐ろしさだな……

ここで、

『いつまでもビクビクすんな!』

と怒ったところで逆効果だろうし、もう何も言わない。私が酷いことをしないっていうのを彼女自身が実感してくれるまではこういう感じが続くだろうし。

体中の傷跡を見ながら、私はそっとお湯に浸した布で、緊張で強張った彼女の体を拭いだした。

「今後、こうやって私が時々、あなたの<手入れ>をするから。あなたは私の大事な<道具>なの。そして私は自分の道具は自分で手入れする主義。あなたは大人しくされるがままになってなさい。余計なことは言わなくていい。しなくていい。とにかく私がすることを受け入れなさい」

なんて命令したって怖いものは怖いだろうし、彼女の知らない扱いをされると不安にもなるだろう。

これが彼女にとって<当たり前>になるには、きっと、数年とかの時間がかかると思う。

だけど焦らない。焦ればきっと逆効果だ。

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