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彼女が気にしてる気配もないし、これはもう

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家に帰ると、私はまず、エマの様子を窺った。

そっとドアを開けて中をそっと中を覗き込む。奴隷小屋に鍵なんか掛からない。主人の都合でいつだって命令できるようにね。

だけど私はそういうの嫌だから、寝てるはずの彼女を起こさないように気を付けて。

息を殺して聞き耳を立てると、真っ暗な部屋の中からすうすうと寝息が聞こえる。

目が暗さに慣れると、毛布にくるまって床に寝てる彼女の姿が目に入った。私の言いつけ通りにちゃんと睡眠をとってくれてるのが分かってホッとする。

それでも、部屋の寒さは厳しくて、よくこんなところで毛布にくるまっただけで寝られるなって思う。慣れっていうのはそういうものかもしれないけど、それにしたって、ねえ……

彼女の<汲み取りの仕事>の引継ぎはもうすぐ終わるらしい。そうすれば晴れて私の専属の奴隷ということになる。

まずは家の仕事を任せて、私がどういう主人なのかをしっかり理解して、私の意向に従ってもらうことにしよう。

彼女一人を救ったところで意味がないのは重々承知してる。だけど、だからって何もしないというのも、私自身が納得できない。

これが何百年後かの変化に繋がると信じて<私なりの奴隷との接し方>というのを探るんだ。

リレ達とはそれなりに上手くいってたと思うけど、それでも奴隷制度をなくそうなんていう気運にはまるで繋がった実感はない。

ああでも、一部にはネローシェシカのように奴隷制度を快く思ってない人もいるにはいるから、ここに比べるとまだ何となくマシっていう印象もあるのかな。

私が、奴隷解放の現場を見ることはきっとないと思うけど、地球でできたことがここではできないってこともないだろうし、そうなることを信じよう。

なんてことを考えつつ、私はそっとドアを閉じたのだった。



エマの様子を確かめてようやくなんか今日一日の仕事が全部終わった気がするな。

そんな訳で、お風呂に入る。

エマが沸かしてくれてたからちょっとの準備ですぐに入れた。

さすがに湯船のお湯は少し冷めてたけど、石釜の方のお湯は熱々だから、栓を開けて湯船の方に流し込み、温度を上げる。

そうしてる間にベントに、

「一緒に入る?」

と声を掛けた。

「カリンがそれを望むなら、喜んで」

なんて、気障な返事にも嫌味がない。<男前>っていうのはこういうことを言うんだろうなあ。

堆肥化の魔法で処理したとは言ってもアルカセリスのゲロを被った彼の服を私の手で脱がせて、洗いカゴに入れる。

その時、エマが使っていた前の包帯が目についた。一応、洗って置いてあったんだけど、彼女が気にしてる気配もないし、これはもう、捨てちゃっていいのかな。

と思って手に取ったんだけど、

『まあ、また今度でいいか……』

って戻したのだった。

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