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アルカセリスの気持ちを受け止めながらも、私の気持ちも譲らない
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『自分に正直になる』ことと、
『自分の気持ちばかり相手に押し付けようとする』のとは、私は違うと思ってる。
自分の気持ちを正直に打ち明けた上で、それが届かないのなら諦めることも必要だと思うんだ。相手の気持ちを考えるならね。
こっちの気持ちばっかりちゃんと汲みとってもらえるのが当然で、他人の気持ちなんて二の次、三の次、とかやってたら、そりゃ疎まれるって。
アルカセリスの私に対する想いは、正直に話してくれていい。私はそれについては耳を傾けるつもりだ。だけどその上で、受け入れられない部分についてははっきりとそう言わせてもらうし、彼女がもし、実力行使に及んだりして私や彼が危険に曝されば容赦はしない。容赦しないことについては、きっちりと伝えさせてもらってる。
その上で、こうやって彼女が酒の席で本音をぶちまけて私に甘えたりするくらいのことは受け入れてあげてもいいと思ってるんだ。
本当は、エマについてもこうやって甘えてほしいと思ってる。
だけど彼女にはそんなこと、<天に唾するような行為>も同然みたいで、およそ無理なんだろうな。
だから、
『正直な気持ちを表に出すことができない』
という事情についても、それは認めてあげなきゃって気がするんだ。
今、粗末な奴隷小屋で一人、ただ焼いただけのジャガイモを食べてお風呂に入って、ボロ布を巻きつけただけで床に寝てるであろう彼女のことを思うと、胸が締め付けられそうになる。
私達はこんなに楽しめてるのに……
「カリン……」
ベントがそんな私に気付いて声を掛けてくれる。
彼の気遣いが本当に沁みる。
それに対してアルカセリスは、
「こら~! 私のカリンさんに色目使うな~!」
なんて言いながら彼に絡んでたりする。
こういうところなんだよ。私が彼女を選べないのは。
彼女が同性だからってことじゃない。人間としての波長が、彼女とは十分に噛み合ってないんだ。だから彼女を選ぶことはない。
でもそれは『彼女が悪い』ってことでもないと思うんだ。彼女に悪気はない。責任はない。
だからこそ、そういう部分でも噛み合う相手が見付かってくれたらなって、思う。
アルカセリスはいいコだよ。明るくて健気で一途で。たぶん、エマも本質は彼女に近いんじゃないかな。だけどエマが置かれてる境遇がそれを許さない。
辛いなあ……
と考えながらも、
「セリス、どうどう」
アルカセリスの頭を撫でつつ、私は穏やかになだめた。そうすることで、私にとっての順序を言外に伝えていくんだ。あくまでベントの方が上だっていうことをね。
アルカセリスの気持ちを受け止めながらも、私の気持ちも譲らない。
それが必要だと、私は思ってる。
『自分の気持ちばかり相手に押し付けようとする』のとは、私は違うと思ってる。
自分の気持ちを正直に打ち明けた上で、それが届かないのなら諦めることも必要だと思うんだ。相手の気持ちを考えるならね。
こっちの気持ちばっかりちゃんと汲みとってもらえるのが当然で、他人の気持ちなんて二の次、三の次、とかやってたら、そりゃ疎まれるって。
アルカセリスの私に対する想いは、正直に話してくれていい。私はそれについては耳を傾けるつもりだ。だけどその上で、受け入れられない部分についてははっきりとそう言わせてもらうし、彼女がもし、実力行使に及んだりして私や彼が危険に曝されば容赦はしない。容赦しないことについては、きっちりと伝えさせてもらってる。
その上で、こうやって彼女が酒の席で本音をぶちまけて私に甘えたりするくらいのことは受け入れてあげてもいいと思ってるんだ。
本当は、エマについてもこうやって甘えてほしいと思ってる。
だけど彼女にはそんなこと、<天に唾するような行為>も同然みたいで、およそ無理なんだろうな。
だから、
『正直な気持ちを表に出すことができない』
という事情についても、それは認めてあげなきゃって気がするんだ。
今、粗末な奴隷小屋で一人、ただ焼いただけのジャガイモを食べてお風呂に入って、ボロ布を巻きつけただけで床に寝てるであろう彼女のことを思うと、胸が締め付けられそうになる。
私達はこんなに楽しめてるのに……
「カリン……」
ベントがそんな私に気付いて声を掛けてくれる。
彼の気遣いが本当に沁みる。
それに対してアルカセリスは、
「こら~! 私のカリンさんに色目使うな~!」
なんて言いながら彼に絡んでたりする。
こういうところなんだよ。私が彼女を選べないのは。
彼女が同性だからってことじゃない。人間としての波長が、彼女とは十分に噛み合ってないんだ。だから彼女を選ぶことはない。
でもそれは『彼女が悪い』ってことでもないと思うんだ。彼女に悪気はない。責任はない。
だからこそ、そういう部分でも噛み合う相手が見付かってくれたらなって、思う。
アルカセリスはいいコだよ。明るくて健気で一途で。たぶん、エマも本質は彼女に近いんじゃないかな。だけどエマが置かれてる境遇がそれを許さない。
辛いなあ……
と考えながらも、
「セリス、どうどう」
アルカセリスの頭を撫でつつ、私は穏やかになだめた。そうすることで、私にとっての順序を言外に伝えていくんだ。あくまでベントの方が上だっていうことをね。
アルカセリスの気持ちを受け止めながらも、私の気持ちも譲らない。
それが必要だと、私は思ってる。
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