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正直な気持ちを隠した上での上辺だけの付き合いって、結局は疲れるだけなんだよね

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酔っぱらいに絡まれたりとかありつつも、飲み会そのものはとても楽しいものだったと思う。

私はお酒はそんなにたくさん飲みたいと思わないから、

「飲みたい人、飲める人はしっかり飲んでくれて構わないけど、飲めない人には無理に勧めないこと、あと、私もあんまり飲めないから、勧められても困るからね」

と、先に釘を刺させてもらってた。

もっとも、酒が進んでくるとそういうのお構いなしになっちゃうのもいるからね。その辺りは、

「飲まんと言っとるじゃろがい! このボケェ!」

とか、わざと大袈裟に言ったりして、皆でゲラゲラ笑ったりもした。

こういうところも、あまり四角四面には考えない。こうやって一緒に笑ってもらえるのなら、面白おかしい感じで大声を出したりもする。

それでいいと思うんだ。

もっとも、その辺りの分別をなくしたくないからっていうのもあって、あまり飲まないようにしてるっていうのもあるんだけどさ。

『せっかくの楽しい時間にそんな風に考えてて楽しい?』

なんて思うかもしれないけど、何を楽しいと感じるかは人それぞれだしさ。私は、みんなが楽しんでるのを見てるのが楽しいんだ。一緒になってバカ騒ぎしたいというのとはちょっと違う。

それが私にとっての<楽しさ>だから、押し付けられても困るんだよね。

もちろん、私みたいな楽しみ方をするのが正しいと押し付けることもしない。

みんなはみんなで楽しんでくれたらいいんだ。

それについてベントは言ってくれる。

「私はカリンのそういうところも好きですよ。何もかも他人に合わせるのが正しいわけでもない。その一方で、何もかも他人に反発するのが正しいわけでもない。そういう風に考えられるあなただからこそ、私は信頼することができます」

一部の酔っぱらい達がちょっと収集つかなくなってきてるのを横目に見ながら、ベントは私に合わせて抑えめにしてくれて、サラッとそんなことも言ってきてくれる。

ホント、敵わないなぁ……

って、ちなみにこの時、ティンクフルムはどうしたかと言うと、もう早々に、大して飲まないうちに酔いつぶれちゃって寝ちゃってた。

でも、アルカセリスはさすがにまだ健在で、

「なんですか~? カリンさんを口説いてるんですか~? 許しませんよ~。カリンさんは私のモノですぅ~」

とかなんとか、すっかりただの酔っぱらいになって、彼に絡んでたりもしたけどね。

だけど別にいい。こうやって彼女の本音を知らないと、やっぱり上手く対応できないと思うから。

相手の本音を知るっていうのは大事なことでもあると思う。本音を伝える時にも言い方には気を付けたいと思うけど、正直な気持ちを隠した上での上辺だけの付き合いって、結局は疲れるだけなんだよね。

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