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あくまで相手が傷付いてるか、ショックを受けてるかで判断したいと思ってる

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『しっかりしてよ! だらしない!』

とラウラがフルムを叱責した時には『それはちょっと』と諭しておいて、

『お兄ちゃんのバカ!』

となじった時にはただ見守ってたことについて『矛盾だ!』って感じる人もいると思う。だけどそれは、目の前で二人のやり取りを見てた私の実感とはそぐわないかな。

私が傍で感じたフルムの反応が違うんだ。

『しっかりしてよ! だらしない!』と叱責された時にはぐっと沈痛な表情になったのが、『お兄ちゃんのバカ!』と言われた時にはなかった。それはたぶん、フルムの受け取り方が違ってたからだと思うんだ。

叱責された時のは、フルム自身が実は誰よりも自覚してて、自分でも許せないと感じていたところに重ねて言われたからショックを受けてしまったんだと思う。

対して、『お兄ちゃんのバカ!』って言われたのは、いつものこの二人の間で行われてるただのレクリエーションだったんだろうなっていうのが私の実感だ。

私は別に、お互いに分かっててやってる<レクリエーション>とか<ツッコミ>とかにまで難癖をつけたいわけじゃない。それはさすがに野暮ってものだと思うから。

そこまでいってしまうと、テレビ番組とかの演出にまでクレームを付けずにはいられなくなりそうで、さすがにね。

その辺りの分別はつけたいとも思ってる。

だから、<正義>ってものを信じてなくても、子供向けのヒーローものの番組にケチを付けたりはしないんだ。

あくまで相手が傷付いてるか、ショックを受けてるかで判断したいと思ってる。

そうなると、やっぱり自分の目で直に確認できたことでないと迂闊には口出しできないかな。

今回は、私の目の前で、ラウラが言ったことでフルムがショックを受けたのが分かったから諭させてもらっただけなんだ。

そんなわけで、その後の微笑ましい兄妹のやり取りについては、私はただあたたかく見守らせてもらっただけなんだよね。



なんてことがありつつ、先にラウラの家に寄って彼女を送り届けて、それから詰所へと戻った。

すると、ベントとブルイファリドもちょうど帰ってきたところで、

「おかえりなさい」

って出迎えてくれた。

「どう? 大丈夫だった?」

改めて堆肥化の件について詳しい説明を求めたい云々の件についてそう尋ねる。

するとベントはにっこりと微笑んで、

「はい、それはもう滞りなく」

と応えてくれて、ブルイファリドも、

「今後も改めて補足説明が必要になれば順次対応させていただきますということで話がまとまりました」

って説明してくれる。

「そっか。面倒を掛けるけどよろしく頼みます」

ホッとしながら、そう言わせてもらったのだった。

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