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その場のノリだけで『格好いい』とか『正しいことをしてる』とか絶賛するのって

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私の両親や兄は、とにかく他人を何かといえば罵倒するタイプの人間だった。

それは、よく言えば、

『自分に正直』

ってやつなんだろうけど、そういうのを『痛快』とか『積極的』とか感じる人もいるんだろうけど、でも、罵倒された側にすればたまったものじゃないよね。

確かに、マナーの悪いことをしてる人間に、

『何やってんだお前!』

ってバシッと言ってやれれば格好いいかもしれない。実際、それを『格好いい』と言う人もいると思う。

だけど、他人を罵ったりするのってそもそもが<マナー違反>じゃないの? マナーに反してる人がマナーを云々するのって、詐欺師が泥棒を馬鹿にするようなものじゃない?

それ以前に、前にも言ったと思うけど、私の両親は、かつてグレにグレまくってた自分達が過去に何をしてきたのか忘れたみたいに、表向きだけはいい人ぶってたんだよね。しかも、私がもう小学生ぐらいになって、ものの分別が少しは分かるようになってきてからも、その目の前で、

『禁煙場所で煙草を吸う』とか、

『ゴミをポイ捨てする』とか、

『要らなくなった自転車をスーパーの駐輪場に放置してくる』とか、

そういうこと平気でするような人だったんだよ。

それで、そんな親のどこをどう尊敬とか信頼とかしろって言うんだか。

世の中にだってあるじゃん? <美談>としてもてはやされてた話でも、詳しい事情が分かってくるととても美談なんて言えるようなものじゃなかったっていうのがさ。

で、それまで持ち上げてた人達まで手の平を返してボッコボコに袋叩きにするとか。

そういうの、普通に見てきてるでしょ?

だからさ、その場のノリだけで『格好いい』とか『正しいことをしてる』とか絶賛するのって何か違うと私は思うんだよ。

少なくとも、私はずっとそう感じてきた。

そんなわけで、ティンクラウラがティンクフルムを叱責するのを、ただ、

『微笑ましい』

とかってだけで見過ごすことはできないんだ。

だからって別にドラマやアニメの中でそういう演出があっても、それに対して『そうじゃない! それはおかしい』とクレームをつけたりはしないよ。その程度の分別はつけてるつもりだし。

ただ、目の前で、自分の親しい人がそんなことをしてるのを見るとね、さすがに見過ごせないかな。

しかも、言われた方のティンクフルムが明らかにムッとしてるのを察しちゃうとさ。

これが本当に微笑ましいただの<仲のいい兄妹の戯れ>にしか見えなかったら、別に口出しもしなかったんだけどね。

仮にも<大人>として、そんな風に相手を罵ったりしたことでその後の関係が拗れたりした実例を見てきたりした者としては、お節介の一つの焼きたくなるってものだと思うんだ。

でも、それ自体が一方的な押し付けにならないように、気を付けなくちゃいけないなともすごく思うけど。

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