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頑張ってる姿が健気で微笑ましい

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そんな訳でティンクラウラも一緒に行った先で、彼女には私の<助手>を務めてもらった。それと同時に、堆肥化の魔法の講習では、立派に教師役も勤めてくれた。

今回の集まりには彼女の知り合いはいなかったみたいなのに、物怖じすることなく大人達を相手でもしっかりと指導してくれる。

『さすがは、私に食って掛かった気概も持ち合わせてる子ってことかな』

なんて、妙な感心をしてしまう。

だけどそれだけに、将来が楽しみとも言えるかな。彼女はきっと立派に指導役を務めてくれるだろう。

だから私は、自分の仕事を務めあげなくちゃいけない。

「女だてらにねえ……」

とかなんとか、明らかに聞こえるように呟いてくる人もいるけど、スルースルー。いちいち相手してるだけ時間の無駄だ。

「女なんかにホントに土のことが分かんのかよ?」

ベントがいないと、面と向かってそんなことを言ってくる人もいる。

なのに、元々、貴族で騎士でパッと見にも強者オーラを漂わせてるベントがいる時にはそういう人は殆どいないんだ。私達には聞こえないように、コソコソと陰口を叩いてるのは分かるけどね。

それでもベントが視線を向けると、とぼけるように姿勢を正す。

そんな人達相手にムキになっても面倒なだけだよ。私はただ結果を出すだけだ。

で、その結果を突き付けると、フィクションみたいに分かりやすく手の平を返してくる人は案外少ないけど、気まずそうにしながらも大人しく従ってはくれたりするんだよね。

私も、だからって、

『ざまあみろ!』

みたいな露骨な態度はとらない。そんなことすればせっかく従ってくれてる人が改めて反発してきたりするかもしれないし。

と言うか、私と同じゼミで露骨にそういう態度を取る人がいて、その人は、優秀なのは確かに優秀なんだけど、いちいち相手を煽るような言動を見せるから、ちょくちょく悶着起こして作業が停滞するってことを繰り返してたんだよね。

私はそういうのは勘弁してほしいタイプかな。

悔しい思いをしたらその後で『ざまあみろ!』ってやりたい気持ちも分からなくはないんだけどさ、それ以上に、本来の作業じゃない手間をかけるのがとにかく嫌なんだ。

それで言うと、アルカセリスのことも<本来の作業>じゃないけどさ。厄介事の種についてはあらかじめ対処するっていうのも、後々さらに面倒なことになるのを未然に防ぐことで結果的に手間を減らすっていう意味じゃ、私の主義には反してないんだよね。

ちなみに、ティンクラウラが堆肥化の魔法について指導してる分には、みんなわりと大人しく従ってんのよ。これが。

まあ、

『頑張ってる姿が健気で微笑ましい』

ってことみたいだけどさ。

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