上 下
299 / 535

日本人の私からすると何とも珍妙な式になった気がする

しおりを挟む
『たは~、酒が入ってたからってまたみっともない姿を見せちゃったな~』

なんて、私は思いっ切り凹んでた。なのに彼はやっぱり優しくて、思わず甘えちゃって、いっぱい愛してもらった。

そしたらもうどうでもよくなっちゃって、何度も何度ものぼりつめた。

「ふひ~…まんぞく……」

激しい情動が過ぎ去って余韻に浸りながら、そんなことが口に出ちゃった。

ああ、こういうところが色気ないんだよな~。

なんて……

だけど彼はそんな私をそっと抱き締めて体を撫でてくれる。後戯ってやつだと思った。

ったく、どこまで蕩けさせてくれるんだか、この女たらしめが!

とかなんとかちょっと悔しかったりもしつつ、彼の優しさに酔いしれる。



そんなこともありつつ、私はとうとう、彼と結婚した。と言っても、ここでは正式な届け出はできないから、式をおこなっただけなんだけどね。

しかも、今の家を会場にした、簡単かつ質素な結婚式だけど。

私のドレスや彼の礼服は借り物、料理だけは専門の料理人に来てもらってそれなりのを用意させてもらったけど、<誓いの儀式>はここのそれに従って、二人で同じ杯を口にするという、日本の<三々九度>によく似たものをやらせてもらった。

ただ、洋風なウエディングドレスっぽいドレスに三々九度っぽい儀式と、日本人の私からすると何とも珍妙な式になった気がする。

でも、そんな細かいことはどうでもよかった。

『あ~、これで私も人の妻か~……』

なんてことも思いつつ、同時に顔は何だか締まりのないのになってるのが自分でも分かってしまった。

嬉しいんだ。単純に。彼とこうして<夫婦>になれたことが。

「おめでとうございます!」

「おめでと~♡」

ほとんど野次馬同然の近所の人達まで集まって口々にそう言ってもらって、照れくさいやら嬉しいやら。

その中にはアルカセリスの姿もあって、正直、微妙な表情はしてたけど、

「おめでとうございます」

とは言ってくれたんだ。

「ありがとう。これからもよろしくね」

そう返事させてもらった。

たぶん、彼女とはなんだかんだと長い付き合いになりそうな予感もあったからさ。

ただ同時に、彼女にもいい人が見付かってくれたならっていうのが偽らざる気持ちでもある。

本当ならもっとゴネて騒いで私を恨んだっておかしくないのに、こうやって祝ってくれるんだからね。

いいコだよ。

だけど、アルカセリスはまだそれでいいとしても、この場には顔を出すこともできずに奴隷小屋に閉じこもってもらってるエマには、こうやって声を掛けることもできないんだな……

しおりを挟む

処理中です...