上 下
296 / 535

いや~、何という見事な役人気質

しおりを挟む
ここでも雪瓜の栽培を試してみてそれなりの結果が得られて、私は悪くない手応えを掴んでいた。農家の人達の反応もいい。もちろん、全員が全員、手放しに受け入れてくれてる訳じゃないにしても、この現実を前にそれをわざわざ捨てる人はそんなにいないと思う。

役人があれこれ言ってきたところで、それぞれ自主的に堆肥を用意する農家も出始めた。

実は、役人達も堆肥を使うこと自体に反対しているのは少数派だった。なにしろ現に結果が出ている以上、認めざるを得ないという流れはできつつある。

それなのに何をごねているのかと言えば、ひとえに、

『排泄物の処分場そのものを堆肥工場に転換したとして万が一失敗した場合に、誰が責任を取るのか?』

ということに外ならないみたいだね。

いや~、何という見事な役人気質。

どうにもこうにも、昔、エマ達の祖先の裏切り(と言われてるもの)によって戦う力を失い孤立し、それでも何とか生き延びる為に周囲と折り合うことを選んだ先人達の苦労が、

『上手くいってるのなら無理に冒険して新しいことに挑戦しない』

っていう気質を醸成したのかもしれないね。

今の日本の役人が、前例主義で変化を嫌うのも、敗戦後に、人類史上でも稀有な復興と発展を遂げたという<事実>があるから、その成功体験をわざわざ外すようなことはしたくないという気持ちはあるのかもしれないと思った。

だって、高度成長期の日本って、割といろんなことに挑戦してきたみたいだしさ。企業とかも。

外国の技術もどんどん取り込んで吸収して改良して、最初は外国製品の真似だったものが元の製品よりも高性能かつ信頼性の高いものにしちゃったりして、それが日本製品の信頼へと繋がっていったみたいだし。

食べ物とかでもそうだよね。外国の美味しい料理やスイーツをどんどん取り入れて魔改造しちゃって、下手したら本家よりも美味しくしちゃったりとか。

そんなことをやってのけたのは新しいことにどんどん挑戦していったからだと思うんだけど、それで成功しちゃうとつい守りに入りたくなるのも分からなくもないんだ。

排泄物を回収して一括で処分するという今の仕組みが上手くいってる以上、それを変えてしまうのが不安だというのも分かる。

だから、その不安を上回るような<実績>が必要だと思うんだよね。

冬真っただ中で大規模な耕作はできないけど、だからこそ今のうちに土壌の改良を進めたい。その為の指導なんだ。

今のうちにそれをしておけば、春に作付けを行ったらすぐに結果が出る。

次の春以降が勝負だ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

魅了だったら良かったのに

豆狸
ファンタジー
「だったらなにか変わるんですか?」

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...