何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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相手の素の部分を見ることで気持ちが冷めちゃったりするでしょ?

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「じゃあ、一緒にお風呂入る?」

夕食の片付けも終わって、私はアルカセリスにそう尋ねた。

「はい♡」

と、彼女は嬉しそうに応える。

この家のお風呂は贅沢な作りで二人で入っても全然余裕の大きさがある。

ちなみに燃料は、石炭と木炭と泥炭と薪の併用。石炭は高価なので種火的に使って、火力を稼ぐ時には薪に石炭の火を燃え移らせて大きくし、それをさらに木炭や泥炭に燃え移らせる感じかな。

完全に火を落としてしまうとまた点けるのが大変なので、湯沸し用の火は完全には消さずに、常時沸かしっぱなしになってた。しかもこの家の場合、部屋の暖房用とキッチン用とそれぞれ同じ形で火を点けっぱなしにするという贅沢な作りになってるんだよね。

さらには、使用人部屋用のお風呂と奴隷小屋のオーブン兼暖房器具も同じように別々に火を点けっぱなしにしてるから、一般家庭の十倍くらい光熱費が掛かるんだ。

まあ、私がもらってる手当からすれば、雀の涙程度の負担だけどさ。

なお、地球で言うなら<湯沸かし器>に当たるそれは、母屋のは大きな岩をくりぬいて作ったタンクが釜になってて、使用人用のは鉄製のタンクが釜になってる。そこで沸かした湯を浴槽に流し込んで使う。

岩を使うのは当然、錆が浮かないようにする為だ。加えて蓄熱性が高いのがメリットかな。反面、作るのに大変な手間がかかるから非常に高価で、大きなものになれば、平民用の家なら二~三軒建てることができてしまうらしい。

一方、鉄製のは作るのは比較的簡単だけど、当然、錆びるから手入れを怠るとお湯が真っ茶色になるし、手入れしてても十年くらいで壊れてしまって買い替えることになる。

もっとも、中には自分で岩をくりぬいて釜を手作りしてしまう猛者もけっこういるみたいだけどね。そうして何個か作ってるうちに岩釜作りの職人になっちゃう人もいるとか。

そういう話を聞くと、

『ああ、人間って逞しいなあ』

なんて思っちゃったりもする。

なんてことも考えつつ、アルカセリスと一緒にお風呂に入った。

一緒に入るのは、普通は公衆浴場だからアルカセリスも慣れてるし、こうやって身近でいることで、彼女にとっての私という存在をなるべく早く陳腐化させようという狙いもあった。

その為にも、私は彼女の前では気取ったりしない。普段通りのだらしない姿を見せるんだ。

夫婦とかでも、相手の素の部分を見ることで気持ちが冷めちゃったりするでしょ?。

多少時間はかかるかもだけど、自然な形で私に対する気持ちが冷めてくれればと思ってる。

恋愛感情じゃなくて<崇拝>って感じになりつつはあるみたいだけど、そういうのも私は望んでないからね。

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