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戴く訳には参りませんって? 主人に意見する気?

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「う~む……さすがに作りすぎたかな」

三人で食べても残ってしまったマッシュポテトを見ながら、私は呟いてた。

どうも量の加減が上手くできなくて、明らかに限度を超えて作ってしまったのだ。

たぶん、バンクレンチ達が一緒にいた時のことが頭に残ってたんだと思う。彼らの食べる様が印象に強くて、三人分だけ作ったつもりが、一人頭の量が多すぎたんだ。

この辺りにも普段からまともに料理してないことが窺えるってものだな。

「明日また食べれば…」

もう冬真っ只中だから、外気温と変わらないところに置いておけば十分、明日までもつだろうということでアルカセリスがそう言った。なるほど確かにその手もある。

だけど私は、敢えて、

「いや、それもいいけどさ」

とマッシュポテトの入った器を持って立ち上がった。そしてそのまま母屋の裏口から出て、奴隷小屋に。

「いい? 入るわよ」

ノックだけして返事も聞かずに、私は奴隷小屋のドアを開けた。すると中で慌てて何かが動く気配がして、

「どのようなご用でしょう……?」

と言いながら床に頭を付けるくらいに小さくなったエマの姿が下にあった。

『やれやれ……』

そういう態度に出られると逆に気分が良くないから普通にしててくれた方がいいんだけど、これが彼女達にとっては<普通>なのか。

なんて考えて割り切るようにしつつ、

「マッシュポテトが残ったから、食べて」

って器を差し出しつつ言った。

「わ……私のような者が……」

と口にした彼女に向かって、

「戴く訳には参りませんって? 主人に意見する気?」

とかなんとか、尊大な態度をとってみせる。すると彼女は、

「滅相もございません……!」

って更に体を小さくしてた。

だけど私は彼女のそんな姿を見たい訳じゃないから、言ったんだ。

「これは食べ残しのただの<残飯>。残飯処理をしてもらいに来ただけなの。つべこべ言わずに食べなさい」

そう言いながら小屋の中にあるボロッちいテーブルに目をやると、そこには表面がところどころ焦げた食べかけのジャガイモが一個、皿も使わず直に置かれているだけだった。多分、奴隷小屋にも設置されてる小さなオーブンで焼いて食べてたんだろうな。

「は……はい。分かりました……」

戸惑いながらも器を受け取った彼女にはもう目もくれず、私は奴隷小屋を後にした。

「はあ……いちいちこんなことしないと余りものすら貰おうとしないとか、ほんっとメンドクサイ……」

それでも、多少は口もきくようになってきたことには安心しつつ、母屋へと戻ったのだった。

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