何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって？ そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが！！

本人はそれで幸せだったのかなあ。納得のいく人生だったのかなあ

『私と彼の命を守る為なら、攻撃者の首だって撥ねる』

そんな覚悟もできてしまうくらい、私もこの世界での暮らしに馴染んでしまったんだなあ。

とは言え、そうそうそんなことはしないし、したくないけどさ。幸いここまで、そんなことしなきゃならないほど追い詰められることもなかった。

それはたまたまじゃなく、そうならないように気を配ってきたからというのもあると思う。無駄に敵を作らないようにしてきたんだ。私にとって気に入らない相手であっても社交辞令を駆使して『敬して遠ざけて』きたし、下手に陰口叩いてそれが廻り回って相手に伝わったりってこともないように心掛けてきた。

よく陰口とか叩いてる人って、それが本人の耳に入ることがないって本気で思ってるのかなあって思う。

特に女性は多いよね、そういうの。だけど私は関わりたくなかったからその手の話題で盛り上がってるところには一切加わらないようにしてた。

そしたら今度は私の陰口が囁かれるようになったらしいけど、それも徹底的にスルーした。そんなのをまともに相手にするときりがないんだよね。

その手の話題で盛り上がれるタイプって、『敵の敵は味方』だと思ってるらしくて、気に入らない相手を貶める為なら本来は主義主張が噛み合わない人間とでも手を組むってことも平気でできたりするんだよ。

だけど。それでもし、共通の＜敵＞を潰せても、今度は一時的につるんだ者同士で足の引っ張り合いを始めて、結局はまた『敵の敵』と組んで、何度でも同じことを延々と繰り返すんだ。

正直、よくそんなことしてられるねって思う。私から見たら本当に不毛なことをしてるようにしか見えない。

でも本人はそうするのが正しいと思ってるらしくて、一時的にでも気に入らない相手を潰せればそれで優越感とか幸福感とか得られるのか、満足しちゃってるみたい。

でもさあ、傍から見てる分にはちっとも安らいでるようには見えないんだよね。いっつも誰かを罵ってて、苛々してて、楽しそうに見えないんだ。

本人がいいのならそれでいいのかもしれないけどさ、そんな風に敵ばっかり作ってたら、本当に困った時に誰も助けてくれなくなるんじゃないかなあ。

あの王太后さんみたいにさ。

自分の息子にまで『もう楽にしてあげたい』って思われるくらいに敵を作りまくって、味方だった筈の主戦派の人達からも見捨てられて厄介払いされたみたいだし。

本人はそれで幸せだったのかなあ。納得のいく人生だったのかなあ。

少なくとも私はそういうのは勘弁って思う。

だからアルカセリスのことも、命に係わるようなことがあれば容赦はしなくても、そうじゃない限りは私を好きでいることまでやめろとは言わないつもりなんだ。