282 / 535
頑固者だってことを承知してるからっていうのもあるかもだけどさ
しおりを挟む
私一人がいくら努力したって世界の流れそのものを変えられるとは今でも思ってない。
変えられるとは思ってないけど、もしかしたら何かのきっかけくらいにはなるかもしれないと思って努力は続けたいと思ってる。
だって、この世の中ってのは一人一人がちょっとずつ影響を与え合って、それでいろんなことが動いていくんだからさ。
とは言え、実際の私はエマとアルカセリスとが鉢合わせしてトラブルにならないように気を遣うのにさえきゅうきゅうしてるけどね。
ただ本当に厄介だよね。<恨み>や<憎悪>ってやつはさ。『なんかそうだったらしい』ってだけの理由で憎しみ続けることさえできるんだよ?
エマの祖先達がアルカセリス達の祖先を裏切ったなんて、誰一人その現場を見てないんだよ? それであんな怪我をさせるくらいに憎しみ続けられるっておかしくない?
なんて言ったらきっと袋叩きにされるんだろうな。地球でなら<炎上>って感じでさ。
誰かを敵認定してそれをみんなで攻撃しなきゃいけないって空気を作って、乗ってこない人間は<裏切り者>とか<非国民>とか言ってやっぱり袋叩きにするんだよ。
ああ、気持ち悪い。よくそんなことできるね?
私にはできないな。
私は自分の目で見て、耳で聞いて、頭で考えて、心で感じたい。『誰かがそう言ってたから』ですべてを決めてしまいたくない。
ましてや、それで誰かを傷付けるなんてのはお断りだよ。
自分がそんなことされたくないんだから、他人に対してもやらないようにしようと思う。
たとえそれが、その場の空気を乱すことになるとしても。
私がまだいた頃の日本では、<空気を読む>ことがやたらと強調されてた気がする。それは日本人が美徳とする<察し>や<思い遣り>とはむしろ真逆のことなんじゃないかな。
それをおかしいと察しても、自分が察したことに従っちゃいけないなんて、意味分からない。
不確実な情報に従って周囲に合わせろなんて、それこそ謎過ぎる。
ベントはもうそんなことはしない。さすがに奴隷に対しても私にしてるほどの丁寧な対応はしないけど、理不尽に虐げたりもしない。
私がエマを気遣ってたって、『やめた方がいい』とは言わない。
まあそれについては、いくらそんなこと言ったって私が聞き入れたりしない頑固者だってことを承知してるからっていうのもあるかもだけどさ。
「まったく、とにかくエマとアルカセリスが顔を合わせないようにしなくちゃね。やれやれメンドクサイ」
なんて私がボヤいてても、彼は優しげに笑ってるだけなのだった。
変えられるとは思ってないけど、もしかしたら何かのきっかけくらいにはなるかもしれないと思って努力は続けたいと思ってる。
だって、この世の中ってのは一人一人がちょっとずつ影響を与え合って、それでいろんなことが動いていくんだからさ。
とは言え、実際の私はエマとアルカセリスとが鉢合わせしてトラブルにならないように気を遣うのにさえきゅうきゅうしてるけどね。
ただ本当に厄介だよね。<恨み>や<憎悪>ってやつはさ。『なんかそうだったらしい』ってだけの理由で憎しみ続けることさえできるんだよ?
エマの祖先達がアルカセリス達の祖先を裏切ったなんて、誰一人その現場を見てないんだよ? それであんな怪我をさせるくらいに憎しみ続けられるっておかしくない?
なんて言ったらきっと袋叩きにされるんだろうな。地球でなら<炎上>って感じでさ。
誰かを敵認定してそれをみんなで攻撃しなきゃいけないって空気を作って、乗ってこない人間は<裏切り者>とか<非国民>とか言ってやっぱり袋叩きにするんだよ。
ああ、気持ち悪い。よくそんなことできるね?
私にはできないな。
私は自分の目で見て、耳で聞いて、頭で考えて、心で感じたい。『誰かがそう言ってたから』ですべてを決めてしまいたくない。
ましてや、それで誰かを傷付けるなんてのはお断りだよ。
自分がそんなことされたくないんだから、他人に対してもやらないようにしようと思う。
たとえそれが、その場の空気を乱すことになるとしても。
私がまだいた頃の日本では、<空気を読む>ことがやたらと強調されてた気がする。それは日本人が美徳とする<察し>や<思い遣り>とはむしろ真逆のことなんじゃないかな。
それをおかしいと察しても、自分が察したことに従っちゃいけないなんて、意味分からない。
不確実な情報に従って周囲に合わせろなんて、それこそ謎過ぎる。
ベントはもうそんなことはしない。さすがに奴隷に対しても私にしてるほどの丁寧な対応はしないけど、理不尽に虐げたりもしない。
私がエマを気遣ってたって、『やめた方がいい』とは言わない。
まあそれについては、いくらそんなこと言ったって私が聞き入れたりしない頑固者だってことを承知してるからっていうのもあるかもだけどさ。
「まったく、とにかくエマとアルカセリスが顔を合わせないようにしなくちゃね。やれやれメンドクサイ」
なんて私がボヤいてても、彼は優しげに笑ってるだけなのだった。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる