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……ごめん、嘘です。ほとんどベントにやってもらってます

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『なんだかおかしなことになってきちゃったな~……』

アルカセリスが使用人としてうちで働くことになって、さっそく今日から<仕事>を始めいろいろと手伝ってもらうことになった。彼女にやってもらうのは、基本的に使ってない部屋の清掃だ。私達が普段使う部屋については自分達で掃除とかしてる。

……ごめん、嘘です。ほとんどベントにやってもらってます。

ええ、そうですとも……!

だってだって! 彼の方が手際が良くて、私が資料のチェックやサンプルの整理をしてる間にさっさと片付けちゃうんだも~ん…!

ちくしょ~!

なんてこともありつつ、私達の<新生活>はこうして新たなスタートを切ったんだ。

だけど、懸念もある。

エマとアルカセリスのことだ。

二人の仕事は明確に分けて、なるべく顔を合わさずに済むように気を付けた。

庭掃除は、表玄関に通じる辺りはアルカセリスが。

表からはほとんど見えない辺りはエマにやってもらって、かつ、エマには夕暮れまでの間にそれを終わらせて奴隷小屋に戻ってもらうようにした。

アルカセリスは立場上は<使用人>だけど、使用人用のスペースはエマの為に使ってるから、アルカセリスには母屋の空き部屋を新たに<使用人室>にして、そこで待機してもらうことにした。お風呂は、公衆浴場の方に入ってもらう。

この邸宅を使ってた豪商はわざわざ使用人用のお風呂まで作ってたけど、むしろそれがここでは普通だからね。

まったく、どうしてここまで気を遣わなきゃいけないんだか。

普通にみんな一緒にいたらそれでいいじゃん。ほんっとにもうメンドくさい…!

使える資源や物資に余裕がなかった頃にはそうやって身分を厳しく分けて限りあるリソースを分配しないといけなかったんだろうけど、余裕ができてくればそこまでしなくてもよくなるのは、地球の歴史が証明してきてる。

余裕ができればその分だけ人間が増えてさらに資源や食料が必要になるというイタチごっこになったのも事実でありつつ、それは豊かになった先進諸国が少子化に転じたことからも分かる通り、発展するまでの一時的なことだろうし、そうなることが分かっているなら回避する方法だってあるはずだ。

『方法があったってどうせ同じ道を辿る』

って言う人もいるだろうけど、それは人間を馬鹿にし過ぎだと思う。

それに、たとえ同じ道を辿るとしても、だからと言って、

『身分制度を維持して厳しい戒律を守るべきだ』

とか言ったって、<同じ道>を辿るなら、いずれそれが崩壊するという同じ道を辿ることになる筈だよね。

だったら私は、エマがあんな目に遭わずに済むような社会を目指したい。

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