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ここまで<調教>されるにはどれだけの目に遭わないといけないんだろう……
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私が今住んでる家の、表の通りからは見えにくい位置には、ここに住んでた豪商が個人的に抱えてた奴隷の為の小屋がある。裏の路地からも高い塀に囲まれて見えなくはなってるけど、それでも体裁を意識してか、そんなに粗末というほどの作りじゃなかった。正直、宿舎と大差ない気がする。
もっとも、八畳くらいの部屋に何人もの奴隷が住まわされてたみたいだから、環境としては決して良好とは言えなかっただろうな。
とは言え、一般的な奴隷はそれこそ四畳半くらいの掘っ立て小屋に五人も六人もって感じの住宅事情だそうだから、まだマシってレベルではあると思う。
引っ越しの時には誰もこの部屋の掃除をしたがらなかったから私が自分で掃除したんだけど、まあ、それで大丈夫だよね。
「さ、入って」
「…はい……」
生気のない様子でゆらりと小屋に入った彼女に続いて、私とルイスベントも小屋に入る。
小屋に入ると、彼女はそれこそ自分の心を殺して何も考えないようにしてこれから起こるであろうことをただ受け入れようとしてるのが見てるだけでも分かった。
でも、ドアを閉じて他の誰の目もなくなったことで、私は、
「そんなに心配しなくても取って食ったりしないよ。とにかくそこの椅子に座って」
と言って、いかにも『素人が作りました』感あふれる粗末な椅子に座るように促したんだ。
すると彼女は、
「……え…?」
って小さく声を上げて私を見た。その時の私の声が、さっきまでとは打って変わってすごく穏やかな感じだったからだろうな。
戸惑った様子の彼女に私はさらに言う。
「立ったままじゃ落ち着かないからとにかく座って。私はあなたに話が聞きたいだけなんだ。私が元々住んでたところには奴隷はいなかったから、奴隷に意地悪するような習慣もなかったんだよ。そんな趣味もないしさ」
なんて言ってみても彼女はやっぱり呆然としてるだけだった。何を言われてるのか分かってない感じかな。
だから仕方なく、
「いいから座りなさい」
と、今度は冷淡な感じで<命令>した。すると彼女はようやく、
「は、はい……!」
って応えて椅子に座ってくれたんだ。
本当に、ここまで<調教>されるにはどれだけの目に遭わないといけないんだろう……普通に話しかけられることさえ理解できなくなるなんてさ……
人間って『そうするのが正しい』って思い込むと本当にどこまででも残酷になれるんだっていうのをすごく感じる。
彼女達の祖先が自分達の祖先を裏切ったと言われてるからって、ううん、たとえそれが本当だったとしても、今、自分達が裏切られてる訳でもないのにな……
もっとも、八畳くらいの部屋に何人もの奴隷が住まわされてたみたいだから、環境としては決して良好とは言えなかっただろうな。
とは言え、一般的な奴隷はそれこそ四畳半くらいの掘っ立て小屋に五人も六人もって感じの住宅事情だそうだから、まだマシってレベルではあると思う。
引っ越しの時には誰もこの部屋の掃除をしたがらなかったから私が自分で掃除したんだけど、まあ、それで大丈夫だよね。
「さ、入って」
「…はい……」
生気のない様子でゆらりと小屋に入った彼女に続いて、私とルイスベントも小屋に入る。
小屋に入ると、彼女はそれこそ自分の心を殺して何も考えないようにしてこれから起こるであろうことをただ受け入れようとしてるのが見てるだけでも分かった。
でも、ドアを閉じて他の誰の目もなくなったことで、私は、
「そんなに心配しなくても取って食ったりしないよ。とにかくそこの椅子に座って」
と言って、いかにも『素人が作りました』感あふれる粗末な椅子に座るように促したんだ。
すると彼女は、
「……え…?」
って小さく声を上げて私を見た。その時の私の声が、さっきまでとは打って変わってすごく穏やかな感じだったからだろうな。
戸惑った様子の彼女に私はさらに言う。
「立ったままじゃ落ち着かないからとにかく座って。私はあなたに話が聞きたいだけなんだ。私が元々住んでたところには奴隷はいなかったから、奴隷に意地悪するような習慣もなかったんだよ。そんな趣味もないしさ」
なんて言ってみても彼女はやっぱり呆然としてるだけだった。何を言われてるのか分かってない感じかな。
だから仕方なく、
「いいから座りなさい」
と、今度は冷淡な感じで<命令>した。すると彼女はようやく、
「は、はい……!」
って応えて椅子に座ってくれたんだ。
本当に、ここまで<調教>されるにはどれだけの目に遭わないといけないんだろう……普通に話しかけられることさえ理解できなくなるなんてさ……
人間って『そうするのが正しい』って思い込むと本当にどこまででも残酷になれるんだっていうのをすごく感じる。
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