何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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スルーよ、スルー。華麗にスルーするだけだよ

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『なんだ、この程度ですか』

って、いや~、言われちゃったな。コテンパンだよ。

確かに全体の量が増えてなけりゃ実際には意味ない訳で、そう言われても仕方ないとは思うけどさ。

「申し訳ありません。カリンさんは頑張ってくれてるのに……」

帰り道、ブルイファリドがいかつい顔をシュンとさせて詫びてきた。だけど、

「な~に、最初はこんなもんですよ。これから鼻を明かしてやればいいんです。私は気にしてません」

そうだった。この程度のことは覚悟の上だ。それにこの国では、王族や貴族は一般市民である民族をどうもにこうにも下に見てる節がある。だからそれによく似た私のことも見下して当然だろう。

ま、その手の人種差別的なのはこの世界ではごくごく当たり前にあることだし、いちいち腹を立てていても始まらない。スルーよ、スルー。華麗にスルーするだけだよ。

そりゃ物語的にはそういう理不尽に耐えて耐えてドーンと逆転してみせるのが面白いのかもだけどさ、世の中にはそういうのを大して気にもしないタイプの人間だっているんだ。他人の悪意にいちいち反応しないタイプってのもさ。

だってそうでしょ? 自分がそれを気にしてたって、地球の先進国じゃそれなりに<差別>ってものに対する意識は高まってるかもだけど、そういうのがむしろ当然のこととして定着しちゃってるこういう世界では、それに異を唱えるのがむしろ異端なんだよ。

地球でそういう人種差別的なことについて認識が改まってきたのだって、人間の歴史の長さからすればごく最近で、しかもまだまだ本当に理解が進んでるとは到底言えない。<差別>って言葉を使えばまるでそれが当然の権利のように<逆差別>って言葉を使うのがいるくらいだからね。

そりゃさ、<差別>って言葉をいいように利用して我儘放題しようって人間がいるのも事実かもしれないよ? でもだからってそういうのとホントに苦しんでる人を混同しようっていう意識があるようじゃ、まだまだ本当に理解が進んでるとは言えない気がするんだ。

こういうことを言うと、

『人権派かよ~wwwww』

とか嘲笑うのもいるしね。

正直、<権利>って言葉は私もあんまり好きじゃないんだ。いいように利用してる人間がいるのは事実だと思うし。

そもそも、<権利>って言葉を毛嫌いしてる人間達の多くが、他人を口汚く罵ることを、

『当然の権利』

だと思って振りかざしてるし。

そう。『他人が権利って言葉をいいように利用して自分を甘やかしてもらおうとしてる』って考えてる人間自身が、権利を盾に自分を甘やかしてもらおうとしてるんだよ。

地球ですらいまだにその有様なんだから、こういう世界で差別云々をいくら気にしたって嫌な気分になるだけで、何の解決にもならないんだよね。

それに私の場合、単に『気分が良くない』だけで、実質的な被害は受けてないから、変に波風立てない方がむしろ楽なんだよ。

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