250 / 535
どっちが大事かなんて、それこそ人それぞれなんだから
しおりを挟む
『この気持ちは、家のものではなく、自分自身の気持ち』
なるほど確かにそうなんだろうな。『家の為に』とか理由をつけて諦めてしまえるのなら、それはそこまでの気持ちだったってことだろうし。
だからって、家の為に恋を諦めるのが悪いとか言ってるんじゃないよ?。どちらを取るかはその人自身の選択だから、それにケチをつけるつもりもない。どっちが大事かなんて、それこそ人それぞれなんだから。
彼は家よりも私を選んでくれた。そしてそんな彼だから私も彼を受け入れる選択をした。
それだけの話だよ。
「じゃあ、ま、取り敢えず一段落はついたんだから、切り替えていきますか。今はあなたと結婚して新生活を、っていう場合じゃないからそれについても仕事が一段落ついてからってことになると思うけど、そのくらいは我慢してよね」
そう言い放った私に、彼は微笑みながら、
「もちろんです」
と応えてくれた。でも。
「でも、まずここを少しは整理しないと横になる場所もない」
って、彼が。
「……確かに……」
床で寝る気満々の彼のその言葉に、私も自分の部屋を見回しながら呟いた。
まったく。たった一ヶ月やそこらで我ながらよくここまで散らかせたもんだと思うよ。
だから、さ……。
「今から片付けてたんじゃそれこそ朝になっちゃうでしょ。もう今さらだし、一緒に寝たらいいよ。ベッドで」
顔を背けながら、私は吐き捨てるようにして言った。
「よろしいんですか?」
そう訊いてくる彼に、
「よろしいもなにも、今さらだって言ってるでしょーが!。やることやっといて何言ってんの…!?」
貸し切りの公衆浴場でのことを思い出し、顔がかーっと熱を帯びてくるのを感じながら、私は服を脱ぎそれを椅子の背もたれに掛けて、先にベッドに入った。
「だけど、今日はもう疲れたしまだ少しズクンズクンしてるしで、手出し無用だからね…!」
彼に背を向けた状態で言い放つと、彼も、
「ええ、それは承知しています。さすがに私も疲れました。今日のところは大人しく休ませていただきます」
といいつつ、服を脱いでベッドに入ってきた。
正直、すごく意識してしまってたけど、本当に疲れてたのもあってか、自分でも意外なほどにそれからすぐにスッと眠りに落ちてしまったんだよね。
彼もそうだったみたい。
ただ、後で聞いた話だと、アルカセリスは枕を涙で濡らして、ほとんど一睡もできなかったらしいけどさ。
ああ…、申し訳ないことしたなとは思いつつ、こればっかりはね。
ここで変に同情して、彼女をまるで愛人のように囲うほどの余裕は、私にはないからさ。
なるほど確かにそうなんだろうな。『家の為に』とか理由をつけて諦めてしまえるのなら、それはそこまでの気持ちだったってことだろうし。
だからって、家の為に恋を諦めるのが悪いとか言ってるんじゃないよ?。どちらを取るかはその人自身の選択だから、それにケチをつけるつもりもない。どっちが大事かなんて、それこそ人それぞれなんだから。
彼は家よりも私を選んでくれた。そしてそんな彼だから私も彼を受け入れる選択をした。
それだけの話だよ。
「じゃあ、ま、取り敢えず一段落はついたんだから、切り替えていきますか。今はあなたと結婚して新生活を、っていう場合じゃないからそれについても仕事が一段落ついてからってことになると思うけど、そのくらいは我慢してよね」
そう言い放った私に、彼は微笑みながら、
「もちろんです」
と応えてくれた。でも。
「でも、まずここを少しは整理しないと横になる場所もない」
って、彼が。
「……確かに……」
床で寝る気満々の彼のその言葉に、私も自分の部屋を見回しながら呟いた。
まったく。たった一ヶ月やそこらで我ながらよくここまで散らかせたもんだと思うよ。
だから、さ……。
「今から片付けてたんじゃそれこそ朝になっちゃうでしょ。もう今さらだし、一緒に寝たらいいよ。ベッドで」
顔を背けながら、私は吐き捨てるようにして言った。
「よろしいんですか?」
そう訊いてくる彼に、
「よろしいもなにも、今さらだって言ってるでしょーが!。やることやっといて何言ってんの…!?」
貸し切りの公衆浴場でのことを思い出し、顔がかーっと熱を帯びてくるのを感じながら、私は服を脱ぎそれを椅子の背もたれに掛けて、先にベッドに入った。
「だけど、今日はもう疲れたしまだ少しズクンズクンしてるしで、手出し無用だからね…!」
彼に背を向けた状態で言い放つと、彼も、
「ええ、それは承知しています。さすがに私も疲れました。今日のところは大人しく休ませていただきます」
といいつつ、服を脱いでベッドに入ってきた。
正直、すごく意識してしまってたけど、本当に疲れてたのもあってか、自分でも意外なほどにそれからすぐにスッと眠りに落ちてしまったんだよね。
彼もそうだったみたい。
ただ、後で聞いた話だと、アルカセリスは枕を涙で濡らして、ほとんど一睡もできなかったらしいけどさ。
ああ…、申し訳ないことしたなとは思いつつ、こればっかりはね。
ここで変に同情して、彼女をまるで愛人のように囲うほどの余裕は、私にはないからさ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
72
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる