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『家の為』なんていう理由では諦めきれなかった
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「彼女は立ち直れるでしょうか…?」
アルカセリスが出ていったドアを見詰めながら、彼は呟くようにそう言った。それが決して同情からのものでないことも不思議と分かった。彼はただ、彼女に自分の力で立ち直って欲しいと思ってるだけなんだ。
私もドアの方を見詰めながら、呟くように応えた。
「厳しいようだけど、それは彼女次第だよね……ただ、もし、彼女が何か助力を求めてくるのなら、力になりたいとは思う。もっとも、彼女がそれを望むかどうかは、分からないけどさ……」
そうだ。フッた方の人間である私や、彼女から私を奪った形になる彼が自分から手を差し伸べるというのは、むしろ嫌味や思い上がりに受け取られる可能性が高い。だから迂闊に手を出さない方がいいような気がする。少なくとも私はこういう時は放っておいてほしいと思うタイプだ。
それに、彼女の気持ちはあくまで<憧れ>とほとんど区別のつかない段階だっただろうから、これから新しい出逢いがあれば気持ちが切り替わる可能性もあるだろうし。
『……なんて、そんな風に考えるの自体が、フッた側の余裕か……』
でも、たとえそうでも、これが仕事に差し支えるなら困る。切り替えていくしかないし、場合によっては切り捨てることもする。
正直、『人間はなんでこんな面倒な感情を持ってるんだろうな』って思うこともある。『いちいちこんな感情に煩わされたりしなければもっとスムーズにいくのに』なんて考えてしまうこともある。
だけど、それも違うんだろうなって気もするんだ。誰かを好きになって、その人の為にとか、その人に認められるような人間になりたいっていう気持ちも仕事をする上での大きなモチベーションになることだってあるんだろう。
そこまで考えて気が付いた。
『ああ……そうだ。私だって彼のことを吹っ切る為に仕事に集中してたっていう面もあるじゃないか……面倒臭いとか思いつつも、それを利用してるじゃないか……まったく……人間って本当に勝手な生き物だな……』
なんてことが頭をよぎって、思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「私達は、私達の仕事をするだけだよ……」
結局はそれしかないんだって自分自身に言い聞かせつつ、私は彼を見た。すると彼も私を見詰め返して言ったんだ。
「そうですね。彼女の気持ちは彼女だけのものですから、他人には手が出しようのないものです。
私も、あなたと離れてそれを思い知りました。家の為と考えて諦めようとはしましたが、『家の為』なんていう理由では諦めきれなかった。なぜならこの<気持ち>は、キラカレブレン家のものではなく、他でもない私自身のものですから」
アルカセリスが出ていったドアを見詰めながら、彼は呟くようにそう言った。それが決して同情からのものでないことも不思議と分かった。彼はただ、彼女に自分の力で立ち直って欲しいと思ってるだけなんだ。
私もドアの方を見詰めながら、呟くように応えた。
「厳しいようだけど、それは彼女次第だよね……ただ、もし、彼女が何か助力を求めてくるのなら、力になりたいとは思う。もっとも、彼女がそれを望むかどうかは、分からないけどさ……」
そうだ。フッた方の人間である私や、彼女から私を奪った形になる彼が自分から手を差し伸べるというのは、むしろ嫌味や思い上がりに受け取られる可能性が高い。だから迂闊に手を出さない方がいいような気がする。少なくとも私はこういう時は放っておいてほしいと思うタイプだ。
それに、彼女の気持ちはあくまで<憧れ>とほとんど区別のつかない段階だっただろうから、これから新しい出逢いがあれば気持ちが切り替わる可能性もあるだろうし。
『……なんて、そんな風に考えるの自体が、フッた側の余裕か……』
でも、たとえそうでも、これが仕事に差し支えるなら困る。切り替えていくしかないし、場合によっては切り捨てることもする。
正直、『人間はなんでこんな面倒な感情を持ってるんだろうな』って思うこともある。『いちいちこんな感情に煩わされたりしなければもっとスムーズにいくのに』なんて考えてしまうこともある。
だけど、それも違うんだろうなって気もするんだ。誰かを好きになって、その人の為にとか、その人に認められるような人間になりたいっていう気持ちも仕事をする上での大きなモチベーションになることだってあるんだろう。
そこまで考えて気が付いた。
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なんてことが頭をよぎって、思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「私達は、私達の仕事をするだけだよ……」
結局はそれしかないんだって自分自身に言い聞かせつつ、私は彼を見た。すると彼も私を見詰め返して言ったんだ。
「そうですね。彼女の気持ちは彼女だけのものですから、他人には手が出しようのないものです。
私も、あなたと離れてそれを思い知りました。家の為と考えて諦めようとはしましたが、『家の為』なんていう理由では諦めきれなかった。なぜならこの<気持ち>は、キラカレブレン家のものではなく、他でもない私自身のものですから」
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