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正直、私には縁のない状況だと思ってたんだけどなあ

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『これが修羅場か…?』

何とも言えない張り詰めた空気の中、ベッドに座った私と、それぞれ来客用の椅子に座った彼とアルカセリスとが、お互いに視線を合わさず佇んでいた。

正直、私には縁のない状況だと思ってたんだけどなあ。

ただ、深刻な表情をしてるのはアルカセリスだけで、私も彼も、多少気まずさはあっても割と落ち着いてたと思う。

だからむしろ、ここに飛び込んできたアルカセリスの度胸と言うか勇気と言うかに私は感心させられていた気もする。

しばらくの沈黙の後、アルカセリスが口を開いた。

「……お二人は、どういうご関係なんですか……?」

はっはっは!、来たか、定番の質問が。

恋愛ものとかならここで誤魔化して次の展開を演出するところなんだろうけど、生憎、私は、そういう空気を読む気はさらさらないんだ。だから、

「以前の仕事仲間で、私と結婚する為に爵位を捨ててまで追いかけてきたんだよ」

「え……っ!?」

『爵位を捨ててまで』のところでアルカセリスはギョッとした表情になって彼を見た。すると彼はあくまで優しげに微笑み返した。

そこまでだった。まったく容赦なく躊躇なくバッサリ切り捨てる一言だった。三角関係を楽しむ趣味は私にはない。そんなことに煩わされていられる余裕もない。だからここでもうはっきりさせたかったんだ。

アルカセリスにも、貴族が爵位を捨てるというのがどういうことかはある程度分かってた。だから彼の覚悟も分かったんだろうな。

「……カリンさんも、この人のことを愛してらっしゃるんですか……?」

縋るみたいに、最後の希望を託したみたいに、恐る恐る私に尋ねてくる。

だけど私はやっぱり容赦なかった。

「うん。愛してる。一度は諦めようとしたけど、こうやって再会したら気付いちゃった。私、彼のことを愛してたんだなって」

私は、同性愛を否定するつもりはない。そういう人がいるのも受け入れてる。でも、私自身が同性と付き合うかどうかは、それは相手によるよ。アルカセリスはいいコだと思うけど、恋人として愛せるか、生涯のパートナーとして愛せるかって言われると、さすがにまだ知り合ったばかりだし、申し訳ないけどそういう予感はまったくないんだ。

あくまで『友達止まり』、かな。

だから私は彼を選ぶ。下手な期待はもたせない。ラブコメの主人公のようにここで曖昧にするのが<優しさ>だとは思わない。そんな形で<物語>を盛り上げるつもりはまったくない。

『気まずくなって仕事に差し支える』なんて考えない。そんなことで自分の役目を疎かにするような人はこの仕事に関わって欲しくないんだよ。

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