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どっちも良いところもあれば困ったところもあるかな~

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改めて<女性の仕事>という話をすると、現代日本では家事労働や育児を<仕事>と見做すかどうかで何やら議論になるらしいけど、この世界で私が見てきた印象で言うなら、まぎれもなく、

『家事労働や育児は、立派な<仕事>である』

ということに尽きると思う。

だって、それをちゃんとこなせる女性は、しっかり<一人前>として評価されるから。

確かに<手当>とか<給金>という形では支払われないかもしれなくても、ちゃ~んと旦那さんの稼ぎの中から自分の自由にしていいお金も捻出して、奥さんの裁量の下で家計がやりくりされてる訳だから、それ自体が旦那さんにとっての<益>なんだよね。

しかも、そうやって家のことをしっかりやれるっていうのは<キャリア>としても認められていて、旦那さんを亡くした女性の下にはいくつもの縁談が持ち込まれたりと、引く手あまただったりするんだ。だって、<家庭を守れる女性は立派な才女>だから。

近所の奥さん方とのコミュニティの中で社会性も発揮し、勤め先の同僚とかの奥さんとも情報を共有し、旦那さんの素行まで易々と掴んでみせるんだから、正直、<やり手の奥さん>からすれば旦那さんなんて掌の上で転がされてるだけっていう面も確かにあるんだよ。

ただ同時に、命懸けで仕事をしてくれてるっていうのもあるから、敬ってもらえるんだ。

『この可愛い人は、私達家族の為に命を懸けて働いてくれてる』

って思えばこそね。

なんだかそういう辺りがいつの頃からかすっぱり抜け落ちて、『外で働かなきゃ一人前じゃない』みたいな風潮になってきたのは、何故なんだろうな。

これはあれかな。とにかく<労働者>を確保したい側の印象操作か何かなのかな?

それがどうかは私には分からないけど、少なくとも、この世界じゃ<主婦>そのものがれっきとしたキャリアなんだよ。主婦がバカにされるとか、まったくない。バカにする人がいても、それはごく一部。

もっとも、それが行き過ぎて、

『女は家を守るべきだ!』

っていう固定観念になってるのも事実みたいだけどさ。

かつて、ちゃんと家庭を守れる女性は尊敬の対象だったのに、それがまるで<家庭に縛られた奴隷>みたいに蔑視の対象になってしまったのは、何故なんだろう。

どこでそんな錯誤が生じたんだろう。

それも、私がこの世界に来たからこそ得た実感だな。

色々大変な部分もあるけど、戦争とか犯罪とか死が身近な世界ではあるけど、支配階級の横暴さや身勝手さには辟易させられたりもするけど、なんか、現代日本での生活もなんだかんだと苦労やストレスは多かったしで、そういう意味では、

『どっちも良いところもあれば困ったところもあるかな~』

とも、しみじみ思わされるんだよね。

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