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昔みたいに敬ってほしいのなら、それこそ命懸けで働いてみせたら?

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この世界に来てしみじみ実感したけど、女として全身全霊を掛けて敬わなきゃいけないほどの仕事をしてる男性って、正直、現代の日本じゃそんなにいない気がするんだよね。

この世界じゃ、比喩じゃなく本当に命懸けで仕事してる男性は多い。戦場に立つ兵士や王族や貴族はもちろん、猟師や漁師は言うに及ばず、盗賊がうろつくような街道を行きかうキャラバンや行商人の死亡率も当然、今の日本とは比較にならないし、建築土木の現場の安全対策だって冗談みたいにいい加減だから、当たり前のように死亡事故が起こる。農作業中の事故だって多い。

その前提に立てば、仕事に出たって生きて帰ってくるのが当たり前の今の日本で働いてる男性を、命懸けで仕事してた頃と同じように敬うことってできると思う? 私にはできないよ。この世界で、本当に命を賭して働いてる男性を見てしまったらね。

それにさ。『働いて家族を養う』なんてことは、ここじゃそれこそ当たり前も当たり前で、そんなこともできない男性なんて冗談抜きで『生きる価値もない』って言われるレベルなんだよ。それをしてるだけじゃ、別に尊敬なんてされない。できなきゃおかしいんだから。

『俺はお前達を養ってやってるんだ!』

なんて言おうものなら、

『それがどうした? このスットコドッコイ!!』

って言い返されるのが関の山って感じかな。

昔みたいに敬ってほしいのなら、それこそ命懸けで働いてみせたら? 過労死するくらい働けっていう意味じゃなくて、日常業務を普通にこなしてるだけでも命を落とすことも珍しくないような仕事でさ。

毎日毎日、

『この人はもう帰ってこないかも…』

って奥さんに思わせるような仕事してたら、敬ってもらえるかもよ?

そこまでして働いてる旦那さんを労えないような奥さんなら、そりゃさすがに、

『何を考えてるんだ!?』

とか言われても仕方ないかもね。

ただ、ここでも、役人とかの場合は、事故とかに遭う確率も(あくまで他の仕事に比べればだけど)低く、簡単に就けるような仕事じゃないという意味では尊敬もされてても、割と命までは賭けてないってこともあってか、緊張感は緩いかもしれない。女性職員達の様子にもそれが現れてるのかな。

だけど、役人だって必要な仕事には違いない。彼らが地道に裏方として働いてくれてるから国として機能するっていうのもあると思う。

私と一緒に公衆浴場に来た彼女達は、今はまだ正式な役人じゃない。ティンクフルムと同じで現地採用枠で役人を目指してるコだけじゃなく、正直なところ、役人の男性と出逢って捉まえよう的な下心で仕事してるコもいるみたいだね。

でも、安全対策が進んだり、戦争が減ったり、犯罪が減ったりして、これまでは命懸けだった仕事がそうじゃなくなっていくと、だんだんこういう雰囲気が広まっていくのかな~なんて、お風呂で「きゃあきゃあ♡」とはしゃいでる彼女達を見てると思ったりもするのだった。

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