何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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王族や貴族に対する不満が相当膨れ上がってることの裏返しって気もする

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泣きそうな目で私を見る奴隷の女性には申し訳ないけど、私も仕事だからね。少し距離は取りつつ、後ろについていかせてもらった。すると、『障らぬ神に祟りなし』ということか、同じように荷車を引いてる奴隷達も、彼女と私を避けるかのように距離を取ってた。

相当、怯えてるんだな。

ただ、みんながみんな怯えてるだけかと言うと、がっちりした体格でそれなりに腕に覚えがありそうな男性とかは、明らかに不穏な視線を私に向けてきてる。

と言っても、だからって何かする訳にはいかないっていう抑圧された気配もある。奴隷が一般市民を傷付けたとなったら、たぶん、見せしめに何人も何十人も殺されることになると思う。それを考えると迂闊なことはでいないっていうのもあるんだろうな。

だけどそういうのって、ヤケクソになったら関係なくなるんだよね。どんな犠牲が出ようと、誰が巻き添えを食おうと、そんなの関係ないって考えてしまうと、抑止力にならないんだ。

実際、過去にも何度もそういう形でいろんな国で奴隷の反乱や暴動が起こってるのに、なかなか学ばないのはなんなんだろう。暴力で抑圧してることが逆に火種を作ってるってのを学ばないのは。

それに気付くと、徐々に改めていこうっていう機運が生まれるんだろうけど、今はまだ欠片すらない感じだな。

しかもこの国の場合、私の印象だと、明らかに国民の不平不満を、奴隷を恨ませることによって逸らさせようという意図を強く感じた。それ自体は珍しくもない手法だけど、この国の一般的な人達は割と生真面目で温和な人が多いっぽいのに、ティンクフルムの様子を見るまでもなく奴隷に対して冷淡そうなのは、王族や貴族の狙いがハマってしまってるってことなんだろうな。

でもそれは、王族や貴族に対する不満が相当膨れ上がってることの裏返しって気もする。

何の証拠もないけど、ただの憶測だけど、奴隷達の祖先が裏切ったとかいうのも、情報操作だったりする可能性がありそうだな。そんな風に見える状況があっただとか、もしかするとそうなるように仕向けただとか、っていう裏がありそうな気がして仕方ない。

だけどそれも、単なる私の憶測でしかない。証拠は何もない。

自分の無力さを思い知らされるな。

けど、それを嘆いていても始まらない。私は私にできることをするだけだ。

そうして私は奴隷達の後についていく。さらにその私の後ろを、数人の兵士が歩いてた。私の警護の為の兵士だった。ブルイファリドが手配してくれたらしい。

実はさっきも、宿舎の中にブルイファリドやカマルクリスと一緒に待機してたんだ。

正直、護身用の魔法くらいなら私だって使えるから要らないって言ったんだけど、さすがに心配だったみたいだね。

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