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なんかいいなあ、こういうの。日本人の私にはすっごくしっくりくる

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この世界における<魔法>は、以前にも言ったと思うけど万能じゃない。魔法単体では決してそれほど大きな力を発揮しない。

これは、魔法というものがあくまで、『魔力を持った微生物に働きかけ、その力を借りる』という形だからなんだ。

そんな訳で、土木工事とかには実はあまり向かないという面もある。

一応、いくらか土の重量を軽減する程度のことはできるんだけど、一回一回それなりに手間を掛けないといけないから、例えば荷物を満載した荷車の重量を軽減するとかなら一度魔法を掛けてしまえば後は荷車を引っ張ればいいだけだから楽にはなっても、こうやってショベルで土を掻くなんていう場合は人海戦術でガンガンやった方が早いし確実なんだよね。

だから今回も、そうさせてもらったって訳。

ようやく立ち上がれるまで回復して、私達は迎えの馬車に乗り込んで詰所へと戻った。

その頃には夜もすっかり更けていた。途中、ティンクラウラが用意してくれたおにぎりを食べてしのぐ。

でないと、詰所までもちそうになかった。

「お疲れ様でした!」

詰所に戻ると、そんな明るい声で迎えられる。ふわっと緩くカールした栗色の髪を肩の辺りで切り揃えた、ちょっとふっくらした感じの、朗らかな女性だった。

「ただいま、メリサ」

ブルイファリドがようやくという感じで応える。

「夕食の用意はできてますよ。でもその前にお風呂かな」

メリサと呼ばれたその女性は、ドロッドロに汚れた私達の姿を見て、困ったように笑いながら言った。

確かに、この状態じゃ食事も美味しくないかもしれない。

という訳で、それぞれお風呂に入った。

この国の<お風呂>は、基本的に公衆浴場だった。内風呂は一部の金持ちか貴族しか持ってない。だけどその公衆浴場は、湯船があって、さらには好みによって蒸し風呂にも入れるという、他の国のことを思うと非常に凝った贅沢な作りだった。

何と言うか、実に日本人的だと思う。

それが私にもありがたかった。

そう言えば、昔は日本の公衆浴場って混浴だったりした時期があったらしいけど、幸い、ここでは分かれてた。

詰所の隣に作られたそこに入ると、近所の人達で賑わってる。

ああ、なんかいいなあ、こういうの。日本人の私にはすっごくしっくりくる。なんか大変な国に来ちゃったなとは思いつつも、こういう部分については<救い>だよ。

体を洗い、湯船に浸かると、

「んあ~……っ」

って感じでオッサンみたいな声が出てしまう。でもでも、へっとへとに疲れたところにいい湯加減のお風呂に浸かったんだよ? 分かるでしょ?

とかなんとかひたってると、

「あんたが収穫量を増やす為によそから来たっていう人かい?」

って声を掛けられた。

見ると、いかにも人懐っこそうでおしゃべり大好きって感じのお婆さんがニコニコ笑ってたのだった。

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