200 / 535
一緒に偉そうな奴らの鼻を明かしてやろ?
しおりを挟む
私の言葉に、ラウラちゃんは、
「う…うぇ……ううう……」
と声を殺して泣き出した。それまで抑えてきたものが一気に噴き出してしまって、でもまだ何とかして抑えようとしてる感じかな。
細い肩が震えて、小さな体がさらに小さく見えた。たぶん、十一歳とか十二歳くらいかな。十八で成人になるこの世界でも、まだ<子供>だ。
「よく頑張ったね。だけどこれからはその頑張り、私にも力にならせて。一緒に偉そうな奴らの鼻を明かしてやろ?」
私の胸に顔をうずめて、「ひぐっ、えぐっ」としゃくりあげる彼女の体を、私はそっと撫でてあげた。
『小さいな……本当に小さい……こんな子がここまでなるくらいに耐えてきたんなら、報われてほしいと思うよ……』
そう思って、困惑顔のティンクフルムくんとロイドガリウスさんに振り向いて、私は言ったんだ。
「俄然やる気が出てきましたよ。我が君、ファルトバウゼン国王陛下の命という以上に、私自身が『やってやろうじゃないか!』って思いました。皆さんも力を貸してください…!」
こうして私は、ガルフフラブラ王国の農業支援に乗り出したのだった。
そういう訳で早速、ようやく泣き止んだラウラちゃん、ティンクラウラをティンクフルムくんに任せて、私は早速、畑へと入っていった。
そこでは大豆に似た豆が栽培されてるみたいだけど、一般的に流通してるものよりは明らかに粒が小さく、形も悪かった。これじゃ高くは売れないだろうな。
次にその場にしゃがみ込んで土を手に取る。
表面はサラサラの粒の細かい土だけど、少し掘ると粘土質のねっとりした土が出てきた。
『なるほど……元は水田だったんだね』
さらにショベルを借りて畑の隅を掘り起こす。
すると、何十センチかの粘土質の土の下からは赤茶けた土が出てきた。これが本来のこの土地の土だったんだろうな。それを、何百年か掛けて水田に適した土壌へと変えていったんだ。だけど粘土質の土はこの豆の栽培には向かない。もっと粒の荒い、水捌けのいい土の方が適してる筈だった。
この、赤茶けた土のような。
その土を手に取り、口に含む。それを舌で転がして、土の質を味わう。
「え…っ!?」
と、私の後ろの方で声が上がるのが分かった。口に含んだ土をハンカチに出しながら振り返ると、ティンクフルムくんやロイドガリウスさんが驚いた顔をしてるのが見えた。
まあ、いつもの反応だ。ちゃんと分析する方法があるところじゃやっちゃいけないことでもある。土には様々な菌がいて、寄生虫の卵があったりもするからね。魔法でそれらに対処できる私ならではことだから。
そんな二人には構わず、私は言った。
「私は魔法使いだから土の味でいろんなことが分かるんです。なので気にしないでください。それより本題として、他の畑についてはまた改めて確認しないと分かりませんけど、取り敢えずこの畑についてはどうすればいいのか分かりました。早速試してみたいので、人手を集めてもらえますか? さしあたって二十人ほど」
「う…うぇ……ううう……」
と声を殺して泣き出した。それまで抑えてきたものが一気に噴き出してしまって、でもまだ何とかして抑えようとしてる感じかな。
細い肩が震えて、小さな体がさらに小さく見えた。たぶん、十一歳とか十二歳くらいかな。十八で成人になるこの世界でも、まだ<子供>だ。
「よく頑張ったね。だけどこれからはその頑張り、私にも力にならせて。一緒に偉そうな奴らの鼻を明かしてやろ?」
私の胸に顔をうずめて、「ひぐっ、えぐっ」としゃくりあげる彼女の体を、私はそっと撫でてあげた。
『小さいな……本当に小さい……こんな子がここまでなるくらいに耐えてきたんなら、報われてほしいと思うよ……』
そう思って、困惑顔のティンクフルムくんとロイドガリウスさんに振り向いて、私は言ったんだ。
「俄然やる気が出てきましたよ。我が君、ファルトバウゼン国王陛下の命という以上に、私自身が『やってやろうじゃないか!』って思いました。皆さんも力を貸してください…!」
こうして私は、ガルフフラブラ王国の農業支援に乗り出したのだった。
そういう訳で早速、ようやく泣き止んだラウラちゃん、ティンクラウラをティンクフルムくんに任せて、私は早速、畑へと入っていった。
そこでは大豆に似た豆が栽培されてるみたいだけど、一般的に流通してるものよりは明らかに粒が小さく、形も悪かった。これじゃ高くは売れないだろうな。
次にその場にしゃがみ込んで土を手に取る。
表面はサラサラの粒の細かい土だけど、少し掘ると粘土質のねっとりした土が出てきた。
『なるほど……元は水田だったんだね』
さらにショベルを借りて畑の隅を掘り起こす。
すると、何十センチかの粘土質の土の下からは赤茶けた土が出てきた。これが本来のこの土地の土だったんだろうな。それを、何百年か掛けて水田に適した土壌へと変えていったんだ。だけど粘土質の土はこの豆の栽培には向かない。もっと粒の荒い、水捌けのいい土の方が適してる筈だった。
この、赤茶けた土のような。
その土を手に取り、口に含む。それを舌で転がして、土の質を味わう。
「え…っ!?」
と、私の後ろの方で声が上がるのが分かった。口に含んだ土をハンカチに出しながら振り返ると、ティンクフルムくんやロイドガリウスさんが驚いた顔をしてるのが見えた。
まあ、いつもの反応だ。ちゃんと分析する方法があるところじゃやっちゃいけないことでもある。土には様々な菌がいて、寄生虫の卵があったりもするからね。魔法でそれらに対処できる私ならではことだから。
そんな二人には構わず、私は言った。
「私は魔法使いだから土の味でいろんなことが分かるんです。なので気にしないでください。それより本題として、他の畑についてはまた改めて確認しないと分かりませんけど、取り敢えずこの畑についてはどうすればいいのか分かりました。早速試してみたいので、人手を集めてもらえますか? さしあたって二十人ほど」
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
お姉さまは酷いずるいと言い続け、王子様に引き取られた自称・妹なんて知らない
あとさん♪
ファンタジー
わたくしが卒業する年に妹(自称)が学園に編入して来ました。
久しぶりの再会、と思いきや、行き成りわたくしに暴言をぶつけ、泣きながら走り去るという暴挙。
いつの間にかわたくしの名誉は地に落ちていたわ。
ずるいずるい、謝罪を要求する、姉妹格差がどーたらこーたら。
わたくし一人が我慢すればいいかと、思っていたら、今度は自称・婚約者が現れて婚約破棄宣言?
もううんざり! 早く本当の立ち位置を理解させないと、あの子に騙される被害者は増える一方!
そんな時、王子殿下が彼女を引き取りたいと言いだして────
※この話は小説家になろうにも同時掲載しています。
※設定は相変わらずゆるんゆるん。
※シャティエル王国シリーズ4作目!
※過去の拙作
『相互理解は難しい(略)』の29年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の27年後、
『王女殿下のモラトリアム』の17年後の話になります。
上記と主人公が違います。未読でも話は分かるとは思いますが、知っているとなお面白いかと。
※『俺の心を掴んだ姫は笑わない~見ていいのは俺だけだから!~』シリーズ5作目、オリヴァーくんが主役です! こちらもよろしくお願いします<(_ _)>
※ちょくちょく修正します。誤字撲滅!
※全9話
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる