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こういう時、メロエリータならどうするんだろう?

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こういう時、メロエリータならどうするんだろう? ここの場合、王族や貴族はどうやら動いてくれないみたいだから、要は邪魔をさせない感じになるんだろうけど、さて、どうすればいいのかな。

そもそも、顔を合わせる気さえない感じか。

と、その辺りについては今後の流れ次第ってことでいこう。

まずは案内された<役人詰所>というところに行く。

だけど、役人の詰所と言ってもそこは、普通の住宅と何も変わりのない、殆ど<あばら家>って感じの古い建物だった。

「それでは、私はこれで」

私を案内してきた若い貴族は、馬車から私を下ろすと引き継ぎさえせずにさっさと帰ってしまう。本当にまったく上と現場が繋がってないのが分かる。

仕方ないので、私はそのまま詰所らしき建物のドアをノックした。

「はい」

と、中から聞こえたのは、存外、丁寧な返事。声の感じからして若い男性だと思った。

キイと軋みを上げながら開かれたドアから覗いたのは、やっぱり若い、って言うか十代半ばくらいの<男の子>だった。もっとも、メロエリータの例もあるから、見た目通りの年齢とは限らないけど。

「あの…? どちら様でしょうか?」

下手には出てるんだけど訝しんでるのが分かる目付きで私を見る男性に、私はにっこりと笑いかけてみせた。

「初めまして。私はカリン・スクスミ。ファルトバウゼン国王陛下の命により皆様のお手伝いに来ました」

ってハキハキとした感じで自己紹介すると、室内でガタンバタンと大きな物音がして、今度は髭面の中年男性が慌てた様子で若い男性を押し退けるようにして私の前に立った。

「これは失礼しました! スクスミ侯! お話は伺っております! 遠路はるばるご苦労様でした。汚いところですが、まずはお休みください!」

ってな感じで招き入れられた室内も、お世辞にも『綺麗』とは言い難い様子だった。ただ、掃除とかはちゃんとされてるのかな。

それでも、ここで国の大事な仕事をしてるって印象はない。

だけど髭面の男性は私をテーブルまで案内して椅子を引いて、エスコートしてくれた。そういう部分ではきちんとしてると言うか、真面目そうだ。

やっぱりどこか日本人っぽい気がする。

「荷物はどうぞこちらに」

と、大きな籠を出してくれたから、そこにバックパックを下ろさせてもらった。

「変わったバッグですね。でも、そうやって背負うと両手が使えて便利そうだ」

髭面の男性が私のバックパックを見ながら感心したように言った。

「でしょう? 私の郷里では普通に使われてたんですが、こちらではあまり見かけないから特別に作ってもらったんです」

そう。こっちの世界には、大きなきんちゃく袋のようなものか、貴族とかが使う物となれば革でできたトランクのようなバッグが主流で、正直、使いにくかったんだよね。

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