195 / 535
それは、これから行く役人詰所で話していただければ結構です
しおりを挟む
<奴隷の輸出>なんてセンシティブな問題にまで私が関われるとは思わないから、まずはとにかく、ファルトバウゼン陛下からの依頼に応じて、作物の収穫量を上げなくちゃ。
で、取り敢えずは、ガルフフラブラ国王に謁見する。
でも、玉座にふんぞり返っていかにも偉そうにした王様の態度には、正直、げんなりしたけどね。
「遠路はるばる大儀であった。貴公を遣わしてくれたファルトバウゼン国王には深く感謝する」
とか、まあ儀礼上必要なことは最低限わきまえてるみたいだけど、それを言ってる時の様子も、完全に上辺だけだなあというのがありありと分かる感じだった。
とは言え、こっちもその辺りはもう慣れてるから、
「我がファルトバウゼン国王の御名を汚さぬよう、身命を賭して事に当たります」
なんて、仰々しく応えさせてももらった。
ただ、クレフリータ、いや、メロエリータがいないから、これまで彼女に任せきりだったことも私がしなきゃいけないのは、少々気が重い。上手くいくかどうか。
ゲームとかなら、普通、どんどん仲間が増えていって『さあこれからだ!』って感じなんだろうけど、仲間を失って一からって、ほんとどうなのよって感じ。
なんて言うか、あれだな。ムッフクボルド共和国の件までのことは、長い長い<チュートリアル>だったと考えればいいのかもしれないな。そして、ここからが<本番>だ。
ってな訳で、さっそく<準備に取り掛かる為の準備>に取り掛かるとしますか。
「こちらでの担当大臣とはお会いできますか?」
ガルフフラブラ国王陛下との謁見の後、案内役の若い貴族の男性に問い掛けてみる。だけど、
「担当大臣? いえ、我が国にはそのような者はおりませんが?」
などと、意外な返事。
「え? でもじゃあ私はこれからどなたと今後の予定についてお話しさせていただけばよろしいんですか?」
焦りながらも努めて平静に尋ねる。
すると彼は、
「それは、これから行く役人詰所で話していただければ結構です。国王陛下は結果だけを求めておられます。努力は臣民がするものです。私達は彼らを統べるだけでよいのです」
だって。
うわあ……
それってつまり、自分達はただ胡坐をかいて国民が汗水たらして作ったものをひたすら消費するだけってことだよね?
ここの支配階級は、大多数の国民とはルーツが別の民族だからか、完全に『国民そのものが自分達の道具』っていう認識なんだ。
こりゃ、今まで私が見てきた国の支配階級が可愛く見えるくらいだぞ。少なくとも彼らは、『国民と共に国を作り上げていく』という意識はあった気がするし。
やれやれ…大変なところに来ちゃったかなあ……
で、取り敢えずは、ガルフフラブラ国王に謁見する。
でも、玉座にふんぞり返っていかにも偉そうにした王様の態度には、正直、げんなりしたけどね。
「遠路はるばる大儀であった。貴公を遣わしてくれたファルトバウゼン国王には深く感謝する」
とか、まあ儀礼上必要なことは最低限わきまえてるみたいだけど、それを言ってる時の様子も、完全に上辺だけだなあというのがありありと分かる感じだった。
とは言え、こっちもその辺りはもう慣れてるから、
「我がファルトバウゼン国王の御名を汚さぬよう、身命を賭して事に当たります」
なんて、仰々しく応えさせてももらった。
ただ、クレフリータ、いや、メロエリータがいないから、これまで彼女に任せきりだったことも私がしなきゃいけないのは、少々気が重い。上手くいくかどうか。
ゲームとかなら、普通、どんどん仲間が増えていって『さあこれからだ!』って感じなんだろうけど、仲間を失って一からって、ほんとどうなのよって感じ。
なんて言うか、あれだな。ムッフクボルド共和国の件までのことは、長い長い<チュートリアル>だったと考えればいいのかもしれないな。そして、ここからが<本番>だ。
ってな訳で、さっそく<準備に取り掛かる為の準備>に取り掛かるとしますか。
「こちらでの担当大臣とはお会いできますか?」
ガルフフラブラ国王陛下との謁見の後、案内役の若い貴族の男性に問い掛けてみる。だけど、
「担当大臣? いえ、我が国にはそのような者はおりませんが?」
などと、意外な返事。
「え? でもじゃあ私はこれからどなたと今後の予定についてお話しさせていただけばよろしいんですか?」
焦りながらも努めて平静に尋ねる。
すると彼は、
「それは、これから行く役人詰所で話していただければ結構です。国王陛下は結果だけを求めておられます。努力は臣民がするものです。私達は彼らを統べるだけでよいのです」
だって。
うわあ……
それってつまり、自分達はただ胡坐をかいて国民が汗水たらして作ったものをひたすら消費するだけってことだよね?
ここの支配階級は、大多数の国民とはルーツが別の民族だからか、完全に『国民そのものが自分達の道具』っていう認識なんだ。
こりゃ、今まで私が見てきた国の支配階級が可愛く見えるくらいだぞ。少なくとも彼らは、『国民と共に国を作り上げていく』という意識はあった気がするし。
やれやれ…大変なところに来ちゃったかなあ……
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
もういらないと言われたので隣国で聖女やります。
ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。
しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。
しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる