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その夜、私は泣いた。思うに任せないこの世ってものを恨んで泣いた

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ファルトバウゼン陛下に言われた同盟国への支援に、私はすんなり行くことになった。

アウラクレアにも手紙で告げると速便で、

「なにそれどういうこと!? おかしいよ!」

的な文面の手紙が届いた。ここまでの私の説明だとなんかあっさり私を捨てていったように見えるかもだけど、実は彼女も一年以上迷って悩んだ末に、私の、

「永久に会えなくなる訳じゃないんだし、仕事も新しい人がやってくれるし、彼を一番に考えたらいいじゃん。アウラクレアをそれだけ本気にさせた人なんでしょ?」

という言葉で決心できたらしいんだ。

それで言うと、ルイスベントもそうだ。彼もかなり抵抗はしたみたいだけど、ここまで好き勝手やらせてもらってたみたいだけど、いくら三男坊といってもそれはあくまで上の兄弟に比べればというだけの話で、やっぱり有力貴族の家系である以上、限度というものがあったみたい。

「申し訳ございません」

私の前で膝をついて深々と頭を下げる彼に私は言ったんだ。

「あなたが責任を感じることじゃないよ。私があなたの気持ちを知りながら今まで延ばし延ばしにしてきたことが一番の原因なんだからさ。だけど、ごめん。それでも今はまだあなたの気持ちには応えられない」

正直な気持ちだった。彼のことは確かに好きだけど、でも、今回のことでも分かったとおり、彼が貴族である以上、家の方針とかしがらみからは無縁でいられないんだ。そして私には、<貴族の妻>は務まらない。

その夜、私は泣いた。

思うに任せないこの世ってものを恨んで泣いた。

泣いて、泣いて、夜が明ける頃に涙が枯れて、一区切りつけることができたと思う。

彼の奥さんになる人には、私がしてもらえなかった分も大切にしてもらえたらいいな。そうでないと納得できないよ。

ただ、クレフリータだけは、全く音信不通だった。どこで何してるのか、人伝ひとづてにすら伝わってこない。彼女のことだから心配はいらないと思うけどさ。

あ、そうそう。それから、リレってば、奴隷達のリーダー役だった男の子といい感じになってたみたい。ムッフクボルド共和国から帰る途中に様子を見に寄ったんだけどさ。端から見ててもバレバレなくらいお互いに意識してたんだよね。

だけどリレも彼も真面目ないい子だからお似合いだと思う。

なんてことを思いつつ、私は出発の準備を済ませた。

朝、堆肥の回収に出る前の奴隷の子達のところに顔を出して、変わりないことを確認してきた。

いや、厳密には変わってることを確認してきた、かな。だってみんな、うちに来た頃からするとずいぶんと表情が穏やかになったし。

そして、畑にも寄って、バンクハンマにも声を掛けたのだった。

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