何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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今日、貴公を呼んだのは他でもない

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ファルトバウゼン王国陛下からの呼び出しを受けて私は王宮に赴いていた。

でも陛下とお会いしたのは、謁見の間じゃなくて、公務の為の部屋だった。大勢の臣下の前ではできない話をするんだと悟った。

「今日、貴公を呼んだのは他でもない」

恭しく話し出した陛下の表情は、とても苦いものだった。決して愉快な話じゃないこともその時点で察せられた。だからもう、自分でも覚悟はできたんだと思う。

「実は、貴公のことを<間諜>であるとして捕らえるべきだと言う者が少なくないのだ。

いや、もちろん私は貴公を信じておるし、貴公の働きがあってこそ此度の戦が回避されたものだとは私も承知しておる。しかし、それでは納得しない者がおるのも事実なのだ。

なにぶん、貴公はムッフクボルド共和国に多大なる利益をもたらした。それこそ、我が国にもたらしたそれと勝るとも劣らないものだったと聞き及んでおる。それが気に入らない者もおるのだ」

ああ、そういうことか。

私はすべてを理解した。私のしたことを勘繰ってる人がいるっていうことだ。それも、有力な臣下の中に。

陛下は続ける。

「以前から、貴公が爵位を固辞したことが 不敬であると反発していた者はいた。その者達の反発が日に日に膨れ上がってきておってな。私としてはそのようなことは気にするでないと申しておったのだが、人の心というものはかくもままならんということか」

その言葉の向こうに込められたものも見えてしまって、私は自分の心が急速に冷めていくのを感じてた。

だから言ったんだ。言われる前に。陛下が言いにくそうにしてたから。

「では、私はどのようにすればよろしいでしょうか?」

と、回りくどいことは抜きにして単刀直入に訊いてみた。

すると陛下は、深々と頭を下げて、

「すまぬが、貴公にはしばし国を離れてもらいたい。反発している者達の引き締めが済めばいずれは呼び戻す時も来よう。だからそれまでの間、辛抱してもらいたい。

で、ついては、我が国の同盟国で、このところ不作に悩んでいると言うところがあるのだ。そこで貴公には、彼の国への支援に赴いてもらえればと思っておる。それで納得してもらえぬだろうか?」

納得もなにもない。一国の王がそう言ってるのなら、聞かないわけにはいかないだろう。今回の事態を招いた原因の一つに、私が爵位を固辞したことがあると言うのなら、今回の申し出を断ればそれこそどんなことになるか分からない。

だったら行くしかないよね。

今まで散々貢献してきた私にこの仕打ちというのは憤る人もいるかもしれない。だけど私は元々人間を信じていないというのもあったから、まあ、こんなこともあるかって感じで、呆気ないほどに割りきってしまえたのだった。

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