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三年間、私達がどこで何をしてたかと言うと

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三年間、私達がどこで何をしてたかと言うと、ムッフクボルド共和国を構成する他の国々を回って、ただただ農業指導をする毎日だったんだけどね。

言われちゃったんだよ。

「戦争を回避する為の条件として、我々の国にもあなたの<技術>を供与してもらいたい」

ってさ。王太后様に代わって主戦派の実質的なトップに座った、こわ~い顔をした貴族のオジサンに。

そう言われちゃったらもう、無視はできないじゃない? せっかく向こうから条件を提示してくれたんだし。

だけど、三年間ってのはそこそこ長い期間だよね。そのうちに、私の<仲間>は一人減り、二人減りってしてしまったんだ。

なんて言うと死んだみたいに聞こえるかもだけど、実は、バンクレンチとその部下の何人かが、それぞれの国で<運命的な出逢い>ってのをしちゃって、そのままそこに居着いちゃったんだよ。

「バンクレンチ…! あんた、アウラクレアにプロポーズする筈じゃなかったの!?」

アウラクレアそっくりな立派な<おっぱい>をした綺麗な女の子を連れてきて、

「結婚することにしました」

とか言うから、その首根っこひっ捕まえて隣の部屋に行ってそう訊いた。

すると彼は申し訳なさそうに頭を掻きながら、

「さすがにアウラクレアのところに帰れないのがこれだけ続くと、待っててもらえないと思うし、それに彼女に出逢っちまったからにはもう」

だって。

そっか……まあ、それもそうだよね。だいたい、アウラクレアの方は、正直、難しいかなとは私も感じてたんだ。しかも、彼女からの手紙の中で『気になる人がいる』みたいなことも書いてたから、『これはダメかな』って。

「…本気なんだね?」

そう念を押した私に、バンクレンチは真剣な顔で頷いた。

「分かった。じゃあもう何も言わない。幸せになりなさい」

正直な気持ちだった。

出会った時には熱意ばかり空回りして頼りない感じだった彼も、一緒に仕事をしていろいろな経験を積むうちに立派な<大人の男>になっていた。今の彼をただ仕事だけに縛り付けておくのは申し訳ないと私も思う。それに、彼が連れてきた女性は、私に対して丁寧に挨拶してくれた。

いいお嬢さんだと思う。

ただ、

「でも、彼女の両親は体が弱ってて、置いていけないんだ。だから俺がここに残ろうと思ってます」

って、それ、私に言われても困るよ。

「ええ? だけどあなたは、公式にはファルトバウゼン王国の兵士だよ? 勝手に抜けたりしたら脱走扱いになるんじゃない?」

「ええ、でも、それしかないから…」

「……分かった。何かいい方法がないか、クレフリータに相談してみるよ」

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